本研究は、流動性指標と米国大型倒産のパネルデータを用いて、フィナンシャルストレス(流動性危機確率)の予測を行おうとするものである。米国の倒産事象をダミー目的変数とし、流動性に関する金融経済指標を説明変数として倒産を引き起こすようなフィナンシャルストレス(流動性危機確率)を予測するモデルを構築した。説明変数候補は金利スプレッド、マーケットボラティリティ指標と18種類。いずれも公開データで、かつ週次で入手できる指標を用いた。平成26年度は、まず、説明変数候補たる18変数に関し+24から-24までのラグをとり、大型企業倒産/非倒産を目的変数として単回帰することにより、説明変数を先行指標、一致指標、遅行指標に分けた。レポ取引残高はどのラグも大型倒産との相関が高いが、最も大型倒産との相関が高いラグは-12と-24で、これだけを見れば遅行指標であるという結果となった。金融機関間の短期貸借取引環境が大型倒産を追いかけるように悪化していることがうかがえる。また+24から-24までのラグ総当たりでの最適組み合わせモデルを探索したところ、社債担保レポ残高(ラグ8)と株式市場クラッシュ(ラグ1)を説明変数とするモデルを得た。実用的なモデルという見地からラグ4以上の先行ラグの説明変数のみを用いたモデル構築を行ったところ社債スプレッド(ラグ24)と株式市場クラッシュ(ラグ12)を説明変数とするモデルとなった。この最終モデルはリーマンショック前後を含めた経済状況を上手く説明できている。更に、このモデルによる流動性危機確率は、米国上場企業全倒産数(5か月中心化移動平均)との相関が高く(相関係数=0.836)、上場企業の倒産トレンドを予測するツールとしても用い得ることが判明した。
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