研究課題/領域番号 |
24330116
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
蜂谷 豊彦 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (00251645)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コーポレート・ガバナンス / エージェンシー・コスト / 自己株式取得 / 配当政策 / 株式所有構造 / 取締役会 / 利益相反行動 / コスト管理 |
研究概要 |
本研究の目的は,株式所有構造をはじめとするさまざまなガバナンス・メカニズムが企業行動にどのような影響を与えているのかを解明することにあり,3つのテーマに取り組んでいる。第1テーマである配当行動については,平成21年度~平成23年度における基盤研究(B)「コーポレート・ガバナンスに関する多角的実証研究」において明らかにした自己株式取得に関する研究を,異なる視点から捉え直した検証を行った。従来の検証に加えて,エージェンシー・コストの視点から,ガバナンスと自己株式取得との関係を明らかにし,平成24年度にワーキングペーパーとして完成させ,平成25年度には細かな修正や追加検証を行うことにより投稿論文が受理され刊行された。 これと並行して取り組んだ第2テーマである投資行動,第3テーマである多角化については,平成24年度から引き続いて先行研究のサーベイを精力的に進めた。この結果,投資行動のひとつであり,多角化の有力な手段になっている企業の合併・買収を分析の対象にすることにし,リサーチデザインを開始した。さらに,企業の合併時における取締役会の役割に焦点を当て,株主利益と自己利益とを天秤にかける利益相反行動がみられるかどうか,利益相反行動がみられるとすればどのような状況で観察されるのかを明らかにすることにした。現時点において,適切な変数設定とサンプル選択を行うことでデータベースを構築し,分析を開始するところまできている。 また,先行研究のサーベイの過程で,コーポレート・ガバナンスが企業のコスト管理に影響を与えている可能性があることがわかり,これについてもリサーチデザインを行う段階まで到達している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コーポレート・ガバナンスと配当行動との関係については,ワーキング・ペーパーであったものが受理され刊行された。投資行動および多角化についても,当初の予定から少し軌道修正を行ったが,企業の合併・買収との関係について,もう少しでワーキング・ペーパーとしてまとめられる段階にまで進めることができた。さらに,コーポレート・ガバナンスとコスト管理との関係という有力な研究テーマについてもリサーチデザインを行う段階まで進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在,研究を進めている「企業の合併・買収における取締役の利益相反行動」および「コーポレート・ガバナンスがコスト管理に与える影響」に焦点を絞って,これまで通り,研究協力者と緊密な連携をとりながら,仮説の新規性,リサーチデザインの妥当性,分析結果の妥当性,実務へのインプリケーションなどを逐次検討し,論文の完成度を高め,投稿を目指す。当面,研究計画の変更はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究プロジェクトにおいて取り組んでいる第2,第3のテーマは,平成25年度には,先行研究のレビューに基づいてリサーチデザインを行うという段階にあった。研究テーマを絞り込み,リサーチデザインを行い,データベースを構築するというプロセスで,どのようなデータベースを追加的に購入する必要があるかを確定させることができなかったため,平成25年度における助成金の使用を一部見送った。 第2テーマである「企業の合併・買収における取締役の利益相反行動」のリサーチデザインはほぼ固まっており,どのようなデータベースを構築すべきかについても,おおよそ確定した。また第3テーマである「コーポレート・ガバナンスとコスト管理」においても,大まかな研究対象は決定しており,現在詳細なリサーチデザインに取りかかっている。そこで,平成26年度は,早期にリサーチデザインを確定させ,データベースを購入する予定である。
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