本研究の目的は、株主構造における機関化の進行、株式持ち合いの解消、会社法や金融商品取引法などの改正などを背景としてコーポレート・ガバナンスが大きく変化する中で、それらによって企業行動がどのように変化しているかを解明することにある。平成24年度及び平成25年度は自己株式取得に代表される配当行動に焦点を当てて検証を行ったが、平成26年度には投資行動、とりわけ企業の合併・買収に焦点を当てて検証を行った。また、平成25年度から取り組みはじめた企業のコスト行動についても、コーポレート・ガバナンスがどのような影響を与えているかという視点からの検証を試みた。 コーポレート・ガバナンスと企業の合併・買収との関係に関する研究では、企業合併における、被合併企業の経営者の利益相反行動に着目した。経営者が、合併後における地位の確保を優先する行動をとるか、株主の利益を尊重した行動をとるかについて、さまざまな経営者特性や企業特性を考慮して実証的に解明し、ワーキングペーパーとしてまとめることができた。今後、学会発表などを通してブラッシュアップした上で、学術誌に投稿する予定である。 コーポレート・ガバナンスと企業のコスト行動との関係については、第一段階として、平均的なコスト行動からの乖離が生じているかどうか、また生じているとすれば、どのような状況で生じているかを解明した。それに続いて、そのような特殊なコスト行動に影響を与える要因の解明を試み、そのひとつとしてコーポレート・ガバナンスに着目した。これら一連の研究は、ワーキングペーパーとしてまとめ、それらに基づいて3度にわたって学会発表を行った。討論者からのコメントや学会参加者からの質問などに基づいて、現在論文を修正しており、修正が終われば学術誌に投稿する予定である。
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