研究課題/領域番号 |
24330128
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
竹村 正明 明治大学, 商学部, 教授 (30252381)
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研究分担者 |
山本 尚史 拓殖大学, 政経学部, 教授 (80381341)
神田 良 明治学院大学, 経済学部, 教授 (90153030)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エコノミック・ガーデニング / 地域活性化 / 中小企業 / 中小企業支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、地域力活性化のためにエコノミック・ガーデニングという手法が効果あることを実証的・理論的に示すことである。エコノミック・ガーデニングとは、既存の地域経済振興支援策と違って、地域内中小企業を成長させることをその主たる手法とする。 既存の各種調査でもそうであるし、われわれの実証調査でもそれが示されているが、多くの自治体では今でも企業誘致を、最も重要な地域経済の成長要因と位置づけている。われわれも、本研究の実証的な証左の一部として、マーケティング研究で著名なノースウェスタン大学フィリップ・コトラー教授の最新の書籍を翻訳したが、そこでも大企業、特に多国籍企業の誘致が地域(彼らは特にメトロポリタン地域を重視するが)の成長に不可欠であることを、繰り返し繰り返し強調する。 われわれはその経験的で理論的な主張を看過するわけでないが、十全な同意をすることはできない。彼らの想定する地域の成長とは国際的な配置に組み込まれることを前提としているからである。たとえば、遠野市がどのように転んでもネスレ本社を誘致することはできない。コトラーたちの強調する都市の要素が全くかけているからである。そのような地域は一体どうするのか、コトラーたちは触れない。せいぜい一般的なセーフティネット論である。都市の成長によって、過疎を救うのである。それは実際にはありえないことが、もう日本のこの20年間の衰退で実証的には明らかである(理論的な課題はまだ残っている)。 日本国における今の最大の地域問題は、企業誘致では救われないのである。 今年度は大阪府商工労働部が主催する地域コンシェルジュ育成養成講座に理論的な支援を提供した。これはエコノミック・ガーデニングを率先するリーダーを育成することを目的とした、地域振興政策のひとつである。そこで育成講座の効果についての実証調査を行い、論文にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究が計画よりもはるかに進んでいるのは、今年度2つの調査を同時に行えたからである。ひとつは、自治体支援に対する企業側の期待を実証的に調べたことである。これは大阪府下5000社の中小企業に対する質問票調査である。そこでは、中小企業支援策と地域技術支援センターへの期待、そして成長戦略(特に海外戦略)との関係を実証的に明らかにする。 これまでの自治体支援についての実証調査は、ある特定の支援を知っているかどうか、どんな支援があればいいか、という期待を問うのが一般的であった。この質問調査の問題は、その回答が自由回答になることだけでなく、限定された経験の中から答えを無理やり引き出すからである。これはどういうことかといえば、たとえば、洗濯機に期待することを問えば、必ず汚れがよく落ちること、と答えるようなものである。どこにでも持ち運べること、という期待は絶対に出てこない。しかしインドではポータブルな洗濯機が必要とされているのである。結婚式で(結納品儀式があるとして、それとして)見せて、荷車に積んで移動するからである。 われわれが行った工夫は、それがあれば自社のどんな問題解決するかを問うたことである。その結果の一部からわかったことは、多くの企業では、技術的な支援は必要とせず、もっぱら販路開拓が必要なのであった。これでは既存の中小企業支援は全く効果はない。技術的に解決すべき問題は、あるのであるが、そういう認識ではなく、顧客からの要求に合わせられる限り、技術支援など不要なのである。必要なことは、むしろ営業業務なのである。営業部門は中小企業にとっては技術的な付加価値を生み出す部門ではないため、多くは設置しないからである。 もうひとつは、上述の通り、地域コンシェルジュ育成調査を行えたことである。この調査は、地域コンシェルジュの育成プログラムの開発に貢献することになる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究推進方策は、主に2つである。第1には、まずこれまでの調査の記録を研究成果として世に問うことである。第2には、継続する調査を完了させることである。 まず前者として、これまでの調査記録は、2つの実証研究のデータと地方自治体への取材記録がある。これらを整備することが成果発表の基礎となる。われわれはすでに理論的な成果や調査の一部を先行的に国際学会で発表しており、それを継続するだけであるが、そのためには、すでに一部の成果をいくつかの国際学会にエントリーしている。それを達成することが、本研究の成果になる。すでに本研究において過去3年間で10件以上の国際学会での報告を行っているので、おそらくそれほどの困難はないだろう。 後者としては、大阪府商工労働部の地域コンシェルジュ育成講座への理論的貢献がある。それは国際発表のみならず、日本国内においては日本語の論文の発表はもとより、実際に地域貢献を実施することでもある。すでに昨年度の調査プロセスで大阪府商工労働部のセミナーに数回理論的に関わっており、今年度もそれを継続する。特に、大阪府商工労働部では地域コンシェルジュの育成を、長期課題を位置づけて政策目標にあげており、そこでの理論的貢献は、エコノミック・ガーデニングを用いた地域開発モデルの先駆的成果となるだろう。
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次年度使用額が生じた理由 |
企業調査費用が、予定より少し安くできたため。当初、企業調査のデータベースから7000社以上の企業をピックアップした。その予算を計上していたのだが、いくつかの基準を設定すると5000社だけが調査の対象となった。その分、郵送費や入力が安く済むことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度も数回の国際学会発表や国際ジャーナルへの投稿を計画しているので、その査読費用に振り替えることが最も適当であると考えている。
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