研究課題/領域番号 |
24330130
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
村上 由紀子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (80222339)
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研究分担者 |
石川 淳 立教大学, 経営学部, 教授 (70308633)
義村 敦子 成蹊大学, 経済学部, 教授 (50297058)
宮本 大 同志社大学, 経済学部, 准教授 (30434682)
田中 秀樹 青森公立大学, 経営経済学部, 講師 (90567801)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際労働移動 / 多国籍企業 / イノベーション / 国際経営 / 多様性 |
研究実績の概要 |
平成26年度は第一に、これまでに行った20社を超えるインタビュー調査、日本のR&D本社へのアンケート調査(約100社)、海外R&D拠点へのアンケート調査(約130社)をもとに、多国籍企業における研究開発者の国際移動が知識移転に与える影響とそれにかかわるマネジメントについての研究結果を、学会、論文、書籍で発表した。 海外拠点に焦点をあてた実証研究から、海外派遣者は、知識のキャリヤーや国境を越えるユニット間のコミュニケーションチャネルとなり、また、ローカル知識を吸収して人的資本を形成することにより、多国籍企業内の知識移転を促進していることが見出された。また、海外派遣は暗黙知を移転するとき、知識の受け手の吸収力が低いとき、送り手の知識が豊富で価値が高いときに活用され、その効果が高いことも明らかになった。 一方、日本のR&D本社に焦点を当てた研究からは、外国人や派遣から帰国した日本人を活用することによって、海外からの情報・知識の移転が研究成果の向上に繋がることが見出された。しかし、国籍や経験の多様性はチームにコンフリクトをもたらす可能性もあるため、多様性がチームの創造的成果に影響を及ぼすメカニズムについて、先行研究のレビューから新たな理論構築を行い、多様性に対応したマネジメントに関する仮説を提案した。これらの研究成果は、知識や技術のフローと創造を重視しているものの、人材の国際的な活用に遅れがみられる日本において、国や企業の政策策定に役立つ重要な知見を提示している。 さらに平成26年度は、国境を越えて移転された知識が組織内でどのように変換・結合されイノベーションにつながるか、また、イノベーションにつなげるための条件整備やマネジメントについて、R&Dチームを対象としたアンケート調査と研究開発者個人を対象としたアンケート調査を設計し、自動車、製薬、電機産業を中心に調査の実施を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本プロジェクトの目的は第一に、多国籍企業のR&Dを研究対象として、グローバルイノベーションのメカニズムを解明し、科学技術人材の国際移動が、国境を越えて展開される知識や技術の移転と創出に果たす貢献を明らかにすることである。第二に、国際移動を行った科学技術人材の行動や組織における活用の違いが、R&Dの成果(イノベーション)に与える影響を見出し、政策提言を行うことである。平成26年度でこれらの研究課題に関するすべての研究活動を終了する予定であったが、R&Dチームを対象としたアンケート調査と研究開発者個人を対象としたアンケート調査の実施が順調に進まず、平成26年度で終了することができなかった。それらのアンケート調査の実施が完了していないために、特に第二の研究課題について、未解決の部分が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、現在進行中のR&Dチームを対象としたアンケート調査と研究開発者個人を対象としたアンケート調査を早期に完了する計画である。チームを対象としたアンケート調査はセッティングが難しいが、実績概要で述べたような多様性の効果を検証するために、前例の少ないR&Dチームを対象としたアンケート調査にも取り組んでいく。調査が終わり次第、結果をアンケート報告書、研究会、学会、論文等で公表する。さらに、本年度はプロジェクトの最終年度として、本プロジェクトの二つの目的(「現在までの達成度」の欄を参照)に添って、これまでのすべての研究結果をまとめ、研究成果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に、R&Dチームを対象としたアンケート調査と研究開発者個人を対象としたアンケート調査の実施が順調に進まず、平成26年度で終了することができなかった。それらのアンケート調査の実施が完了していないために、データの解析とその後の成果発表が滞ったことにより、繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
R&Dチームを対象としたアンケート調査と研究開発者個人を対象としたアンケート調査を実施するための経費、プロジェクト内で研究会を開催するための経費、成果を外部に発表するための印刷費や旅費に使用する計画である。
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