研究課題/領域番号 |
24330132
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
正司 健一 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70127372)
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研究分担者 |
水谷 文俊 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (60263365)
村上 英樹 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (90243295)
三古 展弘 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (00403220)
酒井 裕規 鳥取環境大学, 経営学部, 講師 (20612336)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 交通論 / EST / 社会的費用 / 公的規制 / 地域乗合バス / 交通手段選択 |
研究概要 |
本研究プロジェクトは,持続可能な社会構築に資するために,社会的費用の小さい交通体系の構築を念頭に,交通企業の規制のあり方,交通事業のビジネスモデル等に関する提言につながる政策研究を目的にしている。中間年度にあたる25年度の具体的成果は下記の通りである。 まず海外ジャーナルに採択された研究では,2002年,わが国で行われた参入退出規制の規制緩和が乗合バス事業に及ぼした影響を,定性・定量の両面から検証した。その結果,定性的な分析からこれまでのところ市場構造に大きな変化は見られないこと、公営バス事業を対象に確率フロンティア分析を行った定量分析でも事業者の効率性値に有意な影響を与えていないことを明らかにした。この研究を発展させ,国際学会で報告した研究では,1994年から2010年までの地方運輸局ベースのデータを用いて,事業者の費用効率性の計測を行い,ここでも参入退出規制の緩和という制度変化は事業者の費用効率性値に有意な影響を与えていないことを示した。また効率性への影響は,制度変化よりも自治体との補填契約方式や民間事業者への管理委託の方が大きいと推論できる。これら以外にも,民間セクターによる公共交通サービスの供給というその特徴から多くの関心を集めているわが国私鉄企業による多角化戦略の展開に関する研究,交通事業の規制政策の変更が経済厚生に与えた影響の分析に関する研究,無回答データの扱いが問題となっている所得変数を自動車保有モデル推定の際どのように扱うかに関する研究,国際物流における海運と空運の選択行動をプロダクトサイクルの視点から分析した研究,さらに持続可能な交通政策のパラダイム転換で先行しているといわれる欧州に関するサーベイも推し進め,それぞれ一定の成果を得,その一部を後に示すように,国際学会において,また論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3年計画の研究プロジェクトの中間年度として,当初計画していた課題に関する研究がおおむね順調に進んでいることは,5本の論文を公表することができていることからも明らかである(研究実績欄を参照のこと)。この成果は,昨年度に比べると査読付き論文数の点で減少しているものの,同様の規模である。さらにこれに加えて5本の国際学会報告を行っているように,研究の進展はおおむね予定通りであり,国際的情報発信にも努めている。本研究プロジェクトの最終年度にあたる26年度は,これまで行ってきた各研究をさらにおしすすめ、その成果を統合することで,所期の目的を達成することが可能になると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまで通り,メンバーそれぞれが研究を進めることを基本としながら,計画通りにプロジェクトを推進する予定である。とくに夏の英国リーズ大学に滞在していた三古の帰国を待って,それぞれの研究成果を持ち寄り,持続可能な社会構築のための交通に関する総合的政策の検討会を開催し,研究成果の確認,共有化ならびに共通の分析課題について議論を深める。その際,若手研究者を意識的に議論に参加させることとし,本分野の我が国の研究の底上げに貢献することをめざす。また本年度も,5月にタイ・バンコクで開催される国際学会を始めとした国際的な研究集会に積極的に参加し,その研究成果を発表し,本分野における各国の専門家との議論行う予定である。さらに平成27年(2ないし3月)には,われわれの研究成果の最終報告会を欧州にて開催することを計画中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は,正司が副学長,水谷が研究科長(兼学部長)の任にあったこと,村上が出張予定であった国際学会参加を都合により取りやめたこと,さらに招聘予定であった van de Velde氏が,欧州側で別途進行中の研究プロジェクトで東アジア(日本を含む)への出張することとなり,そのついでに神戸に立ち寄っていただけたため,予定していた招聘経費のうち旅費部分が不要となったなどの理由により,残額が生じた。 当初計画策定時点では開催されることがわかっていなかった,本年5月,バンコクで開催される国際学会での報告に必要となる経費,ならびに欧州側研究者の要請に応える形で欧州(ベルギーを予定)で開催予定の最終報告会などで計画的に使用する計画である。このうち後者については,以前から研究交流があり,また本分野の先進的研究者でもあるvan de Velde氏(デルフト工科大学),さらにはC. Nash教授(英国リーズ大学)とすでに検討を始めている。この最終の国際セミナーを国際的にも本分野の研究者が数多く存在し,また政策面でもより先行している欧州で開催することで,より多くの海外参加者を得ることが可能になり,そのような環境で議論する機会を持つことは,われわれの研究の国際性を高め,さらに今後の研究進展にとっても大きなプラスとなることはいうまでもない。
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