研究課題/領域番号 |
24330147
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 香里 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (40292784)
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研究分担者 |
田中 秀幸 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (30332589)
リン イーシェン 立教大学, 社会学部, 准教授 (80533025)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ジャーナリズム / メディア産業 / プロフェッショナリズム / 職業 / 国際比較 / 東アジア / 公共性 |
研究概要 |
本研究の目的は、伝統的なマスメディア産業は、コンジット(伝送路)とコンテンツ(作品内容)の垂直統合型構造にあったが、近年、世界的にはこれらが分離して構造変容が進みつつある。そうした傾向に鑑み、日本、ならびに東アジアの現状を把握し、将来の情報社会を展望するものである。2013年度は、2012年度の調査をもとに、前半は、日本、韓国、台湾、中国のニュース報道におけるデジタルメディアの利用状況について各国の状況を調べた。各国との比較において、日本では、新聞産業やテレビ局はデジタル技術の利用に消極的かつ慎重であり、依然としてコンジットとコンテンツの垂直関係を維持する傾向が極めて強いことが明らかになった。また、この調査をもとに、職業としてのメディアの比較方法論について欧州の最新研究状況を参照しつつ、国際学会発表を行った。後半は、この状況の背景をより深く探るために、日本の主要全国紙に絞って、コンテンツのオンライン化について、7社の担当者にインタビュー調査を行った。インタビューに際しては、当時来日して、デジタル・メディア論が専門の、フィンランド・アールト大学研究員(現在ヘルシンキ大学講師)Mikko Villi氏に協力を仰いだ。このインタビュー結果をもとに共著論文を執筆し、2015年5月にシアトルで開催されるInternational Communication Association(ICA)に提出したところ、査読の上、受理された。産業の面では、さらに、実際に朝日新聞社と、震災関連のデータビジュアリゼーションの共同作業を学生たちと行い、新たな新聞ジャーナリズムの可能性を探った。この成果は、12月に朝日新聞1面に掲載され、3月に成果シンポジウムを開催した。シンポジウムには(株)グーグル、岩手日報のゲストも招き、情報産業とメディア企業の協働の可能性について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2012年度は、メディア産業を新聞に絞り、集中的にデジタル化と職場構造、および職業意識の変化を探った。それによって、査読英語論文1本、査読付き会議発表2件が実現した。また、申請書通り、実際に朝日新聞と共同研究と実践を行い、産業との協働を実現した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、比較調査の手法によってメディア職業変動を明らかにしているが、2014年度は、最終年として、日本の状況をフォーカスしつつ、他の東アジア諸国の状況も明らかにし、さらにこれまでの成果をまとめて、日本のマスメディアを参照点に、成果をまとめていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、とくに日本を集中的に調査し、メディア企業やジャーナリストたちとデジタル技術によるジャーナリズムの実践にも参加した。したがって、アジア地域の研究が手薄になった。 来年度は、集中的にアジア地域の状況をレビューし、さらに論文をまとめて発表することができなかったため、来年度以降、海外の国際学会を中心に発表を計画したい。
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