研究課題/領域番号 |
24330155
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
石井 まこと 大分大学, 経済学部, 教授 (60280666)
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研究分担者 |
阿部 誠 大分大学, 経済学部, 教授 (80159441)
宮本 みち子 放送大学, 教養学部, 教授 (60110277)
中澤 高志 明治大学, 経営学部, 教授 (70404358)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地方圏 / 若年者 / 地域経済 / 三世代同居規範 / 主体性 / 産業構造 / 婚活 / 就業支援 |
研究概要 |
本年度は、以下3つの調査研究事業を行った。第1に東北地域調査として、山形県内の若年者の仕事・結婚に関するインタビュー調査、第2に地域若年者の主体形成に関する研究会、第3に若者移住を政策的に推進している自治体でのヒアリング調査である。結果は以下の通りである。東北地域調査については、予定していた追跡調査は対象者の事情により実施が困難なため、新たに多様な経歴をもつ未婚若年者31名のインタビューを実施した。今回インタビュー調査で明らかになった点は、同地域では三世代同居規範が残存し、地域への求心力を持っている層が多い点である。背景には、自営や農業などで自活可能な就業先の存在があった。一方で、安定した就業先がなくても三世代同居規範により求心力が働いている傾向もみられた。今後、求心力が高くない層との比較分析により、地域若年者の就業・結婚行動の特性を明らかにしていく。なお、地域特性の分析には追加調査が必要であり、次年度も引き続き山形県で調査を行う。研究会については、地域若年者の主体性育成に関し、徳島県で長年、若年労働者の調査に携わってきた大阪経済大学の伊藤大一准教授より知見を得た。地域若年者の主体性形成の要因としては、地域の安定した就業先、結婚=家族形成の選択、仕事と遊びのつながり、職業スキルの伝承、労働運動などがあり、これらは地域産業の展開から派生すると考えられ、地域産業についての分析の重要性が確認できた。自治体への調査については、高齢化が進むなかで若者を積極的に移住させる取組みを進めている高知県梼原町でヒアリング調査を実施した。地域住民の参加や環境ビジネスの推進を軸に教育・就業・住宅・医療といった社会保障基盤が整備されている。同自治体は地域若年層支援の好事例であり、他地域での展開可能性についても今後検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は九州調査(大分県)を予定していたが、調査対象の選定に時間がかかり、次年度実施になったため「やや遅れている」とした。また、昨年度完了予定の東北調査について、インタビュー調査の追加が必要と判断し、今年度も実施することにしており、今年度まで東北調査を継続することも「やや遅れている」とした理由である。今年度は、前半に山形調査を行い、後半に大分調査実施することで計画の遅れを取り戻していく。なお、インタビュー調査はやや遅れているが、比較対象となる地域の調査データや、研究会を通じた専門的知見、各地の就業支援組織等からのヒアリング調査は蓄積されており、地域に残る若者の仕事・結婚をめぐる課題の整理については、おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
地域への求心力を産業構造や三世代同居規範との関係からみていくために、東北地域若年者のインタビュー調査を追加する。また九州地域についても、比較可能な地域若年者に対し、今年度中にインタビュー調査を完了する。今後の研究では、こうした調査対象者から集めたインタビューデータを慎重に比較考慮し、地域経済・産業基盤、家族規範意識の残存状況等の視点から、地域に留まる若年層の就業・家族形成の課題を明らかにし、解決策に向けた提言を提起する。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度、九州調査を実施できなかったため残額が生じた。 今年度、九州調査ならびに山形の追加調査を行う際に使用する。
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