研究課題/領域番号 |
24330168
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
竹内 洋 関西大学, 東西学術研究所, 客員研究員 (70067677)
|
研究分担者 |
佐藤 卓己 京都大学, 大学院・教育学研究科, 准教授 (80211944)
井上 義和 帝京大学, 総合教育センター, 准教授 (10324592)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 公共知識人 / メディア / 清水幾太郎 / 野依秀市 / テレビクラシー / 想像された大衆 / 総合雑誌 / 論壇的公共圏 |
研究概要 |
本研究の目的は、日本の公共知識人(public intellectuals : 知的公衆に意見具申する知識人)の成立条件と変容過程のメカニズムを解明することである。公共知識人という対象を画定し実態を把握するために、知的公衆への発信(メディアへの露出等)と政策形成への関与(政府の審議会への参加等)の2つの契機に着目し、<知-メディア-権力>の三者の関係を明らかにする。 平成24年度は先行研究および関連文献の調査を進めつつ、個別の事例研究をおこない、総合雑誌のメディア史的研究に着手した。 個別の事例研究としては、竹内洋は本研究の前から着手していた清水幾太郎の研究(『メディアと知識人-清水幾太郎の覇権と忘却』中央公論新社、2012)をふまえ、また佐藤卓己も本研究の前から着手していた野依秀市の研究(『天下無敵のメディア人間-喧嘩ジャーナリスト・野依秀市』新潮選書、2012)をふまえ、それぞれ<知-メディア-権力>の三者関係について仮説的な考察をすすめた。とくに竹内は「「国民のみなさま」とは誰か-大衆御神輿ゲームの時代」「超ポピュリズム時代の希望」で、メディアと権力が自らの正統性の根拠を「想像された大衆」に置くようになったことが、公共知識人変容の重要な契機ではないかと考えた。井上義和は、戦時体制下の保守主義的学生思想運動の事例研究をふまえ、高等教育史と政治思想史を接続する知的活動の分析枠組について考察した(学会発表、2012)。 総合雑誌のメディア史的研究としては、中央公論(竹内)・文藝春秋(井上)・世界(佐藤)を取り上げている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
とくに当初の研究実施計画で挙げていた「審議会系知識人とメディア系知識人のデータベース化着手」のための準備が遅れている。その理由は、個別の事例研究をふまえた<知-メディア-権力>の三者関係に関する仮説構築のほうに時間を割いたためである。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)<知-メディア-権力>の三者関係を実証的に解明するため総合雑誌のメディア史的研究をおこなう。とくに中央公論(竹内)・文藝春秋(井上)・世界(佐藤)を中心とする論壇的公共圏においてどのような構造転換が起こったのかを分析する。 (2)テレビクラシーの2つの仮説((1)公共的言論の正統性の根拠が「想像された大衆」に置かれる、(2)政策形成が世論動向とスピード感優先のファスト政治となる)を中心に理論構築をすすめる。 (3)審議会系知識人とメディア系知識人の事例分析をおこない、リクルート過程のパターンを抽出する(データベース化作業はパターン抽出に必要な範囲ですすめる)。必要に応じて、関係者にインタビュー調査をおこなう。
|
次年度の研究費の使用計画 |
・必要な文献を調達する(文献複写・図書購入・旅費)。 ・資料整理やデータベース化作業のために研究補助員の協力を得る(謝金)。 ・論壇的公共圏の構造転換を多角的に分析するために、研究分担者以外に研究協力者を得て、研究の進捗報告と討議のための会合を3回程度開催する(旅費・会場費)。 ・必要に応じてインタビュー調査をおこなう(旅費・謝金)。 ・データベース化作業への着手に至らなかったこと、およびインタビュー調査にかかる旅費も当初の予定を大幅に下回ったことにより、繰越金197,181円が生じた。この作業は次年度に回す。
|