最終年度は、①成果物を刊行し、それをもとに②公開シンポジウムを開催した。
①共同研究の成果物として、竹内洋・佐藤卓己・稲垣恭子編『日本の論壇雑誌―教養メディアの盛衰』を創元社から刊行した。共同研究のメンバーは最終的に11名となり、全員が本書の執筆に参加した。第一部「論壇のフォーマット」は『世界』に対する『中央公論』の差異化、両誌に対する『文藝春秋』の差異化によって戦後の中央論壇のフォーマットを形成した三誌についての論稿を収めた。第二部「論壇のアキレス腱」は、論壇の中心をめぐる覇権闘争がカバーしない論壇的公共圏の周縁を、生活や家庭、女性目線などで掬い上げた『婦人公論』と『暮しの手帖』、新感覚の若者読者に照準した『朝日ジャーナル』、論壇の国際化を志向した『ニューズウィーク日本版』を収めた。第三部「論壇のフロンティア」は、論壇のオーソドキシーに対しての対抗言説と対抗編集スタイル(執筆者と構成)をもって登場した保守系の『諸君!』、全共闘メディアといわれた『流動』、電波メディアを補強する『放送朝日』、論壇のアナログからデジタル化への移行である「ネット論壇」を収めた。最後に論壇史年表を添えた。
②公開シンポジウム「教養メディアの輿論と世論」を2014年8月に関西大学東京センターにて開催して80名を超える参加者を得た。ゲスト講演者として牧野智和氏(『自己啓発の時代』著者)と白川浩司氏(元『諸君!』『文藝春秋』編集長)を招き、竹内洋と佐藤卓己はじめ『日本の論壇雑誌』執筆陣とともに、中間文化界の変容と教養メディアの行く末について討論した。
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