研究課題/領域番号 |
24330190
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
林 直保子 関西大学, 社会学部, 教授 (00302654)
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研究分担者 |
与謝野 有紀 関西大学, 社会学部, 教授 (00230673)
山口 裕幸 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50243449)
繁桝 江里 青山学院大学, 教育人間科学部, 准教授 (80410380)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 社会的ネットワーク / 信頼 / 適応価 / ポジティブ・ネットワーク |
研究概要 |
平成25年度には、平成24年度にひきつづき、東日本大震災による津波被災地である岩手県上閉伊郡大槌町において、自治体、復興活動に携わる複数のNPO法人の協力のもと、コミュニティ・ネットワークの構造と主として復興に関する共同効率について、集中的に質的調査および実践研究を行った。同時に、岩手県立大学の岩手県内での取り組みについて、詳細な聞き取りが可能となり、その結果、24年度には十分に実施できなかった近隣の被災地域(釜石市、下閉伊郡山田町、遠野市)についてのフィールドワークを開始することができた。 また、当初より「準限界集落における施設誘致」についてのフィールドワークの対象として設定していた高知県四万十町に関しては、町長および町職員からの詳細な聞き取り調査に加え、地元文化施設、四万十高校の協力を得てフィールドワークを実施し、コミュニティ・ネットワーク構造と適応価についての知見を蓄積した。さらに、平成22年度に開始した大阪市北区の天神橋筋商店街におけるフィールドワーク・実践研究も継続して行った。 平成26年度の後半には、これら地域での研究活動から得られた知見を実証的に検証するため、社会的ネットワークの実験室実験の設計を行った。社会的ネットワーク実験に関しては、負結合ネットワークに関する実証は数多く行われてきたが、正結合ネットワークに関してはほとんど行われてきていない。本プロジェクトによる上記のフィールドワークからは、コミュニティにおける社会効率の改善にあたっては、正結合ネットワークの形成こそが重要であることが確認されたため、負結合ネットワークにおける権力分布についての従来の知見の検証に加え、正結合ネットワークの形成過程に関する実験室実験を可能とする実験システムの開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、コミュニティのネットワーク構造と地域活性化活動の協働効率の関連性を、「適応価」概念を用いることによってモデル化することを第一の目的とする。また、このモデル化の結果を用いて、複数地域の地域活動を「適応価」の視点から診断する方法を提案することにある。この目的に対して、現在までにモデル化のためのフィールドワークから豊富な知見を得、実証的な研究を推進している。さらに、モデルの基本的な設計と、その検証のためのシステム開発が完了しており、「適応価」の診断に関してもシステム開発の準備を開始している。以上をまとめると、本研究は、理論構築に関していくぶんの遅延が認められるものの、プロジェクト全体としては適切な達成状態にあると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成26年度には、上記実験システムを用いた実証研究、これまでの得た知見に基づく理論構築、さらに、ネットワーク構造の「適応価」の視点から診断するシステムの設計を行う。実験、理論構築に関しては、上記のとおり適切な達成状態にあり、26年度の早い段階で完了、成果報告が見込まれる。診断システムの設計に関しては、研究メンバーによる集中的な議論が必要であり、時間的、費用的な面を考慮してICTによる多地点コミュニケーションシステムによる電子研究会合の積極的活用を予定している。診断システムのソフトウェアとしての実現に関しては、25年度までに岩手県立大学産学連携センターのコーディネイトによりすでに準備を進めており、すでに共同関係の構築に成功しているため、26年度にはその共同関係に基づき円滑なシステム開発が見込まれる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に調査対象地域におけるネットワーク調査の実施をとりやめ、詳細なフィールドワークと社会的ネットワーク実験のシステム開発に変更したため、次年度使用額が生じた。 繰り越した予算はほぼ全額、最終年度である26年度におけるネットワーク適応価診断システムの開発費用に充てる予定である(業務委託費を含む)。また、上記システム開発費用を差し引いた残額は、適応価診断システムを稼働させるタブレットPCまたはモバイルPC(物品費)、研究打ち合わせ旅費、データ整理のためのアルバイト代(謝金)として使用する。
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