• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実績報告書

社会的認知の発達と障害に関するコホート研究

研究課題

研究課題/領域番号 24330193
研究機関九州大学

研究代表者

大神 英裕  九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 名誉教授 (20020141)

研究分担者 中村 知靖  九州大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (30251614)
山下 洋  九州大学, 大学病院, 特任講師 (20253403)
實藤 和佳子  九州大学, 高等研究院, 講師(Lecture) (60551752)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード社会的認知 / 定型発達 / 発達障害 / 発達支援システム / コホート研究
研究概要

本研究は、①共同注意を軸とした社会的認知の定型発達過程の解明、②発達障害児の早期スクリーニング法の開発、③発達障害児に対する地域支援システムの構築を目的としている。
①と②については毎年、法定の乳幼児健診時、および教育委員会と連携して実施する5歳児健診と就学判定会議等の資料から定型発達過程や自閉症の初期徴候を探り出している。これまでのデータ解析の結果、定型発達過程に関しては1歳半までの発達軌跡を明確にすることが出来たが、3歳児と5歳児問診表は改訂してもなお精度に問題があることがわかってきた。しかし、後ろ向きコホート調査の結果、小学校就学時までに把握された自閉症の75%は我々の1歳半スクリーニングテストで発見することができた。このことはマススクリーニング法としては1歳半健診は感度が高く臨床的に有効であることを示している。
③の発達障害に対する地域支援は、まず0歳児からの育児相談、気になる子への母子教室、確定診断された発達障害児への個別療育、小学校就学移行キャンプなど、子どものライフステージに沿った発達支援を実施している。昨年度と本年度は第1次コホート集団が中学校へ進学するため、この壁をスームーズに乗り越えるための就学移行支援キャンプを実施する。
これらの基礎的・臨床的データはコホート集団の社会的認知の発達特性としてまとめると同時に、個人差研究の一環として発達障害児の特性と個別の対応のあり方について検討する予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

後ろ向きコホート調査の結果、1歳半健診時の問診表は自閉症の検出に対して75%の感度があった。このことは大規模集団に対するスクリーニング法として臨床的意義があることを示している。しかし、3歳児以降の問診表は改訂してもなお感度は低いままであった。このことは共同注意能力だけでなく言語能力など他の能力を問う質問項目が多用され、項目反応理論の適用条件を満たさず多義的になったこと、あるいは、自閉症の特性は3歳児頃にマスクされると言われていることと関係あるのかもしれない。今後の検討課題である。
発達障害やそのリスク児と保護者に対してはライフステージに沿った地域支援を継続している。この地域支援は保育士・保健師・小中学校教師・心理士・ST/PT/OT・医師など多職種連携による支援システムを構築したものであり、今後、その充実が望まれる。

今後の研究の推進方策

第一次スクリーニングテスト(1歳児健診時の問診票)の識別力は高いが、それ以外の問診票はまだ精度が低く改訂する必要がある。改訂によって臨床的妥当性が高まれば各種の問診票の結果から社会的認知の発達的関連性を検討する。
ここ数年の小学校就学判定結果から発達障害・知的障害・肢体不自由など各種障害区分の有病率を集計する。さらにその結果と第一次テストの結果から各種障害のスクリーニング効果を検討する。
我々のコホート研究(ライフステージに沿った多職種連携による地域支援)は全国的に知られたモデルであり、専門性の育成と社会的啓発と併せて発達障害の支援に不可欠なものである。この活動の継続が学術的にも社会的にも意義あるものと考えている。

次年度の研究費の使用計画

24年度(初年度)は各種スクリーニングテストの改訂、調査の実施、分析法の検討、集団療育や個別療育の方針決定、多職種連携を促す移行支援キャンプや社会的啓蒙活動の検討など多様な活動を実施した。
25年度は、こうした研究方略に基づいて調査・分析・療育・啓蒙などのルーチンの諸活動を実践することに専念したため大幅に経費節約できた。
しかし、最終年度(26年度)は各種データの分析、発達軸に沿った地域支援活動の展開とその総括、社会的啓蒙の継続と得られた研究成果の公表など経費の増大が不可欠となる。
以下に主な使用計画を示す。
謝金1(実験補助:スクリーニングテスト結果の入力と基本統計、ビデオ分析など)謝金2(専門的知識の提供:リサーチライセンス保持者による自閉症診断のためのADOSの実施、要保護協議会のメンバーを兼ねる保健師による個別の支援計画の作成)物品費(データ分析に必要な機器やパソコンの消耗品など)旅費(研究成果の公表のための国内外の各種学会参加や研究会参加)その他(論文作成のための経費、学会参加費など)

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2014 2013 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 5件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] Development of preference for conspecific faces in human infants2014

    • 著者名/発表者名
      Sanefuji, W., Wada, K., Yamamoto, T., Mohri, I., & Taniike, M.
    • 雑誌名

      Developmental Psychology

      巻: なし ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Thought Control Questionnaire 日本語版の開発2014

    • 著者名/発表者名
      義田俊之・中村知靖
    • 雑誌名

      応用心理学研究

      巻: 39 ページ: 236-245

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Similar physical appearance affects friendship selection in preschoolers2013

    • 著者名/発表者名
      Sanefuji, W
    • 雑誌名

      Psychology

      巻: 4 ページ: 8-13

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 非合理的事象は幼児の誤信念理解を促進するか:自己の驚きを手がかりとした心的状態の推論2013

    • 著者名/発表者名
      佐藤賢輔・実藤和佳子
    • 雑誌名

      発達心理学研究

      巻: 24 ページ: 348-357

    • 査読あり
  • [学会発表] “Like me”―類似性選好が拓くこころの初期発達―

    • 著者名/発表者名
      実藤和佳子
    • 学会等名
      日本心理学会第77回大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
    • 招待講演
  • [学会発表] Development of social cognition in infancy: A longitudinal study

    • 著者名/発表者名
      Sanefuji, W.
    • 学会等名
      The 24th Fukuoka International Symposium on Pediatric/Maternal-Child Health Research
    • 発表場所
      Kyushu University
    • 招待講演
  • [学会発表] 発達障害児支援の地域連携

    • 著者名/発表者名
      大神英裕
    • 学会等名
      第12回 東京児童青年臨床精神医学会
    • 発表場所
      後楽国際ビルデイング
    • 招待講演
  • [学会発表] 乳幼児健診と発達障害児のフォロー・支援

    • 著者名/発表者名
      大神英裕
    • 学会等名
      第17回全国発達支援通園事業連絡協議会全国大会
    • 発表場所
      宮崎県立延岡山城支援学校
    • 招待講演
  • [学会発表] 漢字を書くためにはどういう能力が必要とされるか

    • 著者名/発表者名
      髙橋登・中村知靖
    • 学会等名
      日本心理学会第77回大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター
  • [学会発表] 構造方程式モデリング入門―Amos, Mplusを利用した分析―

    • 著者名/発表者名
      中村知靖
    • 学会等名
      九州心理学会第74回大会
    • 発表場所
      琉球大学
    • 招待講演
  • [図書] 第15章多変量解析を利用した心理測定法 行場次朗・箱田裕司(編) 新・知性と感性の心理2014

    • 著者名/発表者名
      中村知靖
    • 総ページ数
      251-264
    • 出版者
      福村出版
  • [図書] 項目反応理論 認知心理学会(偏) 認知心理学ハンドブック2013

    • 著者名/発表者名
      中村知靖
    • 総ページ数
      24-25
    • 出版者
      有斐閣

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi