研究概要 |
本研究の目的は、子どもの感情制御の可塑性を文化比較と脳神経反応という複層的視点によって分析することである。1)幼児期から児童期にかけての実行機能と心の理論の発達が、感情に関わる脳波の活動とどのように関連するのかを分析し、2)感情に関わる脳波の文化差を、日本・アメリカでの同一手続きによる実験を実施して検討し、3)感情の制御についての文化的スクリプトと感情に関わる脳波との関連の検討を行う。 本年度は、日米で綿密に研究打ち合わせを行った上で、「研究1:子どもの感情制御システム課題と脳波測定課題」の予備実験を行った。感情制御に関連する心の理論課題(Bowman, Liu, Meltzoff, & Wellman, 2012)の日本版を作成して予備実験を実施し、日本の幼児(17名)の行動指標および脳波を測定した。心の理論課題の正答率を比較したところ、「統制課題(物の分類)」が最も高く、次いで「欲求の異なる課題」が高く、「信念の異なる課題」が低かった。アメリカの幼児のデータと比べて、同等あるいはやや高い正当率であった。本研究で用いた課題は、従来の心の理論課題(Wellman & Liu,2006)とは自己と他者との関係性が異なり、それが正答率の変化に関連している可能性がある。実験の問題点として、幼児の脳波測定では波形がきれいなものをとるのが難しいので工夫が必要なこと、課題実施に時間がかかるため子どもの集中力を維持させる必要があることが挙げられる。 なお、感情制御課題(DeCicco, Solomon, & Dennis, 2012))の改訂版及び日本版については引き続き作成中であり、海外の研究協力者との打ち合わせを行った。
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