研究課題
平成25年度は、学齢期の自閉症スペクトラム児と定型発達児を対象に、実際の場面における他者への注視行動について検討を行った。最新のTobii社のアイトラッカーTX300を使用することで、画面上ではなく、実際の場面において、注視行動の詳細について(どこを見ているのかについて)、300Hz(0.3秒に注視データ1つ記録)という高い時間解像度で検討することが可能となった。コミュニケーションの相手(実験者)と向かい合って座り、実験者が両脇にある2つのぬいぐるみのうちの1つを見た直後に、参加児がどのような注視行動を示すのか検討した。具体的には、実験者の顔を見た後に視線の先のぬいぐるみを見た回数と、顔の後にもう一方のぬいぐるみを見た回数を数え、両者の間の差得点を算出し、視線追従の指標とした。結果、自閉症スペクトラム児も定型発達児と同様に、実際場面において、他者の視線をよく追うことが明らかになった。これまでのビデオ解析の結果からは、学齢期の自閉症スペクトラム児は、同年齢の定型発達児に比べて、自発的に他者の視線を追う行動が少ないことが示唆されていた。今回の結果は、そのような結果とは異なり、アイトラッカーを用いて実際場面での行動を詳細に捉えると、自閉症スペクトラム児も定型発達児と同程度に視線追従を行っている可能性を示唆している。視線追従は、共同注意の成立や言語獲得、社会性へ繋がる重要な行動であるため、実際場面で自閉症スペクトラム児も同様の行動を示したことは、療育への示唆に富んだ知見と言える。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度に計画・実施した研究課題について、結果を統計学的に処理する上で十分な実験データを収集することができ、研究成果を国際学術誌へ投稿する準備が進んでいるため。
平成25年度に得られた結果をもとに、今後も継続して自閉症児/者・定型発達児/者を対象とした実験心理学的研究を実施する。
本研究課題は3年計画で、残り1年間も継続して実験を行うため初年度に研究費総額の大半が配分となった助成金を使い切ることはせず、翌年度の補助金とあわせて、実験参加者への謝金や実験に関わる物品費などに使用する予定である。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (6件)
Scientific Reports
巻: 4 ページ: 3874
10.1038/srep03874
PLoS ONE
巻: 8 ページ: e74017
10.1371/journal.pone.0074017
Autism Research and Treatment
巻: Article ID 971686 ページ: 8 pages
10.1155/2013/971686
Japanese Psychological Research
巻: 55 ページ: 118-130
10.1111/jpr.12000