研究課題
昨年度から引き続き、実際の社会的交互作用場面における他者への注視行動、特に、後の社会性や言語能力の発達に繋がることが縦断研究からも明らかになっている「視線追従」について、自閉スペクトラム症児および定型発達児を対象にアイトラッカーを用いて実験データを収集した。参加者はアイトラッカーをはさんで実験者と実際に向かい合い、実験者がその両脇に置いてある2つの事物のうちの1つへ視線を移す様を観察した。その際に、実験者の顔を見た後にその視線の先の事物をどれだけ長く見るかを検討した。特に、これまでのわれわれの研究から、自閉スペクトラム症児は画面上の他者の視線を定型発達児と同程度に追うにも関わらず、他者の視線の先にある事物を長く注視する定型発達児とは異なり、視線の先にある事物をそうでない事物と同程度注視することが明らかになっている。さらに、視線の先の事物への注視時間が長くなると語彙獲得の成績が向上することが示されている。そこで、今回も他者の視線の先の事物への注視時間に焦点を当てて検討を行った。解析の結果、これまで視線を追う行動が見られにくいとされていた自閉スペクトラム症児であっても、他者の視線の先の事物をそうでない事物よりも長く見ることが明らかになった。このことは、実際の社会的相互作用場面においては自閉スペクトラム症児も定型発達児と同程度に他者の視線の先の事物に注意を向けることを示唆しており、今後は、なぜそのような注視行動が後の社会性の発達に繋がらないのか、その原因を探ることが療育を考える上でも重要になると考えられる。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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PloS one
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