研究課題/領域番号 |
24330219
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 聖心女子大学 |
研究代表者 |
増渕 幸男 聖心女子大学, 文学部, 非常勤講師 (40149076)
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研究分担者 |
池田 全之 お茶の水女子大学, 文教育学部, 教授 (50212775)
有馬 知江美 白鴎大学, 教育学部, 教授
楊 奕 同志社大学, 社会学部, 教授 (60580751)
銀島 文 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター, 統括研究官 (30293327)
高橋 洋一 鳥取大学, 医学部, 助教 (40594271)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | いのちの尊厳 / 人権教育 / 死生観 / いじめと自殺 / 生命科学 / 宗教教育 |
研究概要 |
本研究は、人間の尊厳理解に関わる生命軽視の社会的な諸現象を、いのちの本質的次元から迫ることを第一の目的としながら、このことが人間の基本的人権の理解とどのように連関しているかを解明するために、文献及び資料の収集と整理を行い、同時に中国と韓国との比較も視野に置いた実証的研究の遂行を目指している。その研究の方向性を確立するための基準の構築のための基礎作業として、この課題に関する教育がどのようになされているかを知るために本年度は聖心女子学院初等科での研究授業を行った。その結果、他者のいのちの尊厳に関する理解は基本的人権に結びつくことであるとの認識はもっていると知られた。その際大きな役割を果たしているのが、宗教教育(キリスト教)であることがわかり、宗教的教育の役割についての意義を確認することができた。 次に、中国の事情を調査するために構築していた北京師範大学及び首都師範大学での共同研究会は、政情不安を理由として北京訪問が中止となり、急遽香港教育学院の研究者との研究会に変更した結果(楊変研究分担者、古賀義連携研究者)、香港での人権教育の積極的推進事情を把握することができた。生命教育を研究している代表者たちから詳細な報告を受け、また学校で使用されている人権教育のテキストも献呈されたことにより、香港での人権教育の実体を知ることが出来た。なお、香港は中国への返還(2006年)後もキリスト教はじめ諸宗教教育が盛んであり、北京との違いを知らされた。その際、研究代表者の増渕が当学院の「宗教教育與心霊教育研究所」で講演を行い、貴重な意見の交換がなされた。ここでもまた宗教性の役割について確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は「いのちの尊厳」教育と人権教育の交差する領域を日本と中国・韓国との比較をとおして明らかにすることを目的としている。その目的の実現のために中国と韓国の研究協力者(労凱声、樊秀麗、Seung-Nam Sonの3教授)との共同研究会を開催することに予定していたが、日中及び日韓の関係悪化のため、今年度は香港教育学院での研究会に変更せざるをえなかった。そのために人権教育が積極的に推進されている香港の教育は確認できたが、北京とソウルの事情を知ることはできなかった。このことが区分(2)の理由である。 また、日本の初等教育での「いのちの尊厳」と「人権」に関する教育の推進状態に関しては、聖心女子学院初等科での研究授業及びアンケートにより、ほとんどの児童生徒が理解していることもわかった。ただし、その背景には宗教教育の存在が見られ、公立学校でのあり方については今後の課題として残された。学会での成果発表に関しては、当研究が初年度ということにもかかわらず、研究分担者・連携研究者の努力により相応の成果を出せていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題の国際比較研究に関して平成25年度は是非とも北京とソウルでの共同研究会を開催したいと考えている。平成24年度に行った香港教育学院での研究会では、中国とは言えイギリスの影響下にあったことから、香港の学校では積極的に人権教育が導入されている事情もわかったが、肝心の中国本土の事情を把握することが今年度の課題である。また、平成25年度は日本の高等学校での「いのちの尊厳」と「人権」に関する教育がどのように展開されているかを理解するために、7月に不二聖心高等学校での研究授業を計画しており、その具体的内容について検討している。学会等での発表も予定しており、その準備を進めている。また、人権教育についての基本的考え方に周知するため、法学(河合幹雄氏)、教育行政(大桃敏行氏)から専門的知識の供与を依頼することになっている。その上で研究分担者及び連携研究者の所属する教育機関の学生対象にアンケート調査を実施することも検討している。なお、世界の教科書を資料として収集し、それぞれの特徴と相違を分析することも役割分担として担当者が進めているので、共同研究会での討議を深めつつ公にしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の未使用残高125,617円は、中国及び韓国での共同研究会に参加予定をしていた研究分担者の旅費及び研究会への専門的知識供与を依頼するための謝金として予定していた分が、政情不安定のために使用しなかったことによる。 平成25年度に請求した助成金は1,200,000円(間接経費360,000円)であり、これについては当初の予定通り、中国及び韓国での共同研究会及び国内での共同研究会の開催(合わせて600,000円)と専門的知識の供与に関する専門家2名を研究会に招く謝金(60,000円)として考えており、また資料の収集とデータ化のための人件費(150,000円)も考慮している。海外での研究会での討議内容を記録するための機材についても、平成24年度は購入していないため25年度には整えたい。 なお、研究分担者(5名)には24年度と同額の分担金(500,000円)を配分することにしている。
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