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本研究の目的は、大正・昭和初期の教育文化状況を明らかにすべく、その接点に位置する「副読本」に焦点を当てて歴史的研究を進めることにある。研究の初年度である本年度は、基本的な資料の収集に力を入れた。その過程で、当初の予想よりも、さらに多くの資料に当たる必要があることが判明した。そこで鋭意、情報を集め、一次資料の探索収集に努めた。収集した資料の分析は、まだ一部しか行っていないが、まずは、明治末期の音声伝達活動と教育活動との関係から派生した「副読本」類に手をつけた。その中に、明治期に学校教育の中で行われた「修身口授」と密接に関連した書物に「講堂訓話」関係の書物群がある。これらは、各地の小学校が小規模な単級学級から大規模な学校へと展開していく中で使われた。その内容は、児童全体に向けた校長の「語り」によって上からの国家主義を伝えるもので、教員が使用する書物である。一方、同じ「修身口授」から出発していながら、必ずしも修身的な内容に終始しない、1904(明治37)年刊の『教授材料話の泉』やその翌年に刊行された東基吉『家庭童話母のみやげ』なども、現れている。これらは、いわゆる大正デモクラシーにつながる文化的な仕事として評価できる。さらに、実際に子どもたちが手にする本としては、巌谷小波が切り開いたお伽読み物路線に便乗した大衆的な子ども読み物が盛んに刊行されていることも確認した。これらの整理にも着手したが、かなり多くの種類の子ども読み物が発刊されており、それらは従来の研究では、全貌が報告されていない。以上、今年度の研究では、「副読本」の基盤を形成する出版状況のいくつかを整理し、その発展の方向への見通しをつけた。
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