本研究の目的は、大正・昭和初期の読書教育文化状況を明らかにすべく、教科書(読本)と子ども読み物との接点に位置する「副読本」に焦点を当てて、歴史的研究を進めることにある。研究の第二年度である本年度は、基本的な資料の収集とその記述に力を入れた。その過程で、当初の予想よりも、さらに多くの資料に当たる必要があることも判明した。そこで鋭意、情報を集め、一次資料の探索収集に努めた。そのうち、明治期の読書インフラと「副読本」との関係を、日本読書学会第57回大会で口頭発表した。この発表により「副読本」の問題を考えるためには、明治期における読書状況を踏まえることの必要性を痛感した。さらに、第二期国定読本と「副読本」の関係を、全国大学国語教育学会第125回広島大会で口頭発表した。早い時期に整備された「副読本」として『小学児童課外の読物』と『興国課外読本』とを取り上げその内容について報告したのだが、会場からは、読書教育実践への言及が必要だとの意見があり、そちらの方面へも研究の手を伸ばすべきだとの認識を得た。また、大正13年に山梨県師範学校付属小学校が編集した『小学文芸読本』の位置に関して、『横浜国大国語研究』に論文を掲載した。具体的に論述を始めたことで、ようやく、「副読本」およびその周辺の状況が見通せるように思えてきた。 以上のように、本年度の研究では、明治期と大正期の読本と「副読本」との関係のいくつかを学会発表したことによって、研究全体の具体的な見通しを得ることができ、またいくつかの論述も蓄積することができた。
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