研究課題/領域番号 |
24330243
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
藤森 裕治 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (00313817)
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研究分担者 |
西 一夫 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (20422701)
岩男 考哲 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (30578274)
新井 浅浩 城西大学, 経営学部, 教授 (80269357)
八木 雄一郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (80571322)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 基層文化概念 / 伝統的な言語文化 / 系統的実践モデル / 国際研究者交流 / イギリス / 台湾 / 授業研究 |
研究実績の概要 |
(1)小学校・中学校・高等学校における「伝統的な言語文化」関連教材の分析と開発:①昨年度学会発表を行った教科書関連語彙悉皆調査の結果をもとに、「古典」の学習問題をどのように設定するかについて雑誌論文にて発表した。②「伝統的な言語文化」にかかる実践・研究論文をレビューし、その独自性がどう担保されるかについての研究論文を発表した。 (2)海外における研究:①英国ハートフォード県Wroxham primary schoolにおいて、言語教育と人格形成・文化伝統との関連をはかる授業参観を継続し、イギリスにおける「伝統的な言語文化」関連の実践的知見を整理した。②前掲校における「伝統的な言語文化」にかかる実践を含んだ調査研究の成果がケンブリッジ大学教育学部によって出版され(Creating Learning without Limits)、これを日本語で翻訳出版する契約を結んできたが、平成26年度内で出版の段階にこぎ着けた。③台湾の学校訪問を実施して、「伝統的な言語文化」にかかる実践を集めた。 (3)実践場面での事例分析研究及び研修会等での発表:文科省主催の読書フォーラム、日本国語教育学会におけるワークショップ、長野市立篠ノ井西中学校・埼玉県立滑川高校・長野県野沢南高校・鳥取県立鳥取東高校・上田市立城下小学校等(日時順)での授業研究会等に招聘され、講演・ワークショップを行って「伝統的な言語文化」にかかる学習指導の実際的展開とカリキュラムの系統化についての研究成果を還元した。 (4)研究成果の社会的還元:生涯教育の視座から、就学前教育として「伝統的な言語文化」にかかわる素材内容を収集した図鑑の監修に取り組み、『にっぽんの図鑑』(小学館、2015.3)の監修・出版を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.海外調査については、当初予定ではアジア圏での調査枠を中国・韓国まで広げる予定であったが、諸事情により台湾に限定した。一方、欧州圏については継続して調査を行っているイングランドのWroxham primary schoolが現政権下におけるナショナルカリキュラムのモデル校に選ばれ、その名が全国的に知られるようになり、指導学校としての地位を不動のものにしている。同校の取り組みと教育原理はケンブリッジ大学教育学部によって”Creating Learning without Limits”(McGrawHill)にまとめられ、英国伝統のトピック学習がもつカリキュラムのモデルが多数示されている。同書を翻訳出版する権利を得、実際に出版できる段階にこぎ着けたことは(2015年6月刊行予定)、本科研で目指した海外における比較研究の成果を世に還元する大きな成果となった。 2.本科研のスタッフによる「伝統的な言語文化」関連の授業研究、講演・ワークショップは、学校単位のものから国レベルのものまで織り交ぜると、当該年度でのべ100回近く行われた。対象となる学校種は小・中・高等学校にまたがり、本科研の目的である系統的実践モデルの構築にむけて、大きく飛躍することができたと考えている。 3.社会的なレベルでの「伝統的な言語文化」の系統的実践モデルとして、就学前教育における「伝統的な言語文化」関連の学びへと視点が広がり、小学館より『にっぽんの図鑑』を刊行することができた。同書は、各種メディア等で取り上げられ、インターネット書籍販売大手によれば、2か月間ベストセラー1~4位(図鑑部門)を維持している。これは、社会現象として「伝統的な言語文化」への関心を持たせる一助になったとみることができ、本科研における成果が予想外に大きな影響性を示した徴証と言えよう。
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今後の研究の推進方策 |
1.海外調査:①アジア圏における「伝統的な言語文化」にかかる教育事情調査対象として、かつて総督府が置かれていた台湾に視点を絞り、同国における我が国及び大陸との関係が、「伝統的な言語文化」の形成にどうかかわってきたのかをまとめ、発表する。②欧州圏については継続して調査を行っているイングランドのWroxham primary schoolを中核に、現政権下におけるナショナルカリキュラムとの関連で、トピック学習を初めとする「伝統的な言語文化」関連の教育内容がどのように構成され実践されているかをまとめ、発表する。③ケンブリッジ大学教育学部におけるプロジェクト”Creating Learning without Limits”の翻訳出版を契機にして、新学習指導要領におけるアクティブ・ラーニングと「伝統的な言語文化」とが深くかかわる教育課程の方向性を示唆し、教育行政機関に発信する。 2.本科研のスタッフによる「伝統的な言語文化」関連の授業研究、講演・ワークショップ:小・中・高等学校にまたがって行われてきた授業研究と講演・ワークショップを総括し、系統的実践モデルの具体像を明らかにして発表する。 3.社会的なレベルでの「伝統的な言語文化」の系統的実践モデル:小学館より刊行された『にっぽんの図鑑』をもとに、就学前教育、家庭教育、生涯学習を視野に入れながら、我が国の文化と伝統にかかる教育活動のあり方について検討し、それをもとに社会的なレベルでの「伝統的な言語文化」教育を提言する。上掲書を教材に用いた実践は、すでに筑波大学附属小学校、信州大学教育学部附属長野中学校等で計画されており、それらの実践的検証をもとにしながら、新学習指導要領への貢献を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
以下の諸事由による。 ・現有の印刷機がサポート終了のため、これを新調するよていだったが、まだ使えると判断して新調しなかった。・イギリス調査の折に現地通訳者がキャンセルとなり、通訳謝金の支払いがなくなった。・タブレット型パソコンの新調に充てる予定で計上していたが、2015年秋にWindows10が発売されるので、それを待つこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
海外調査及び、上記の実購入物品代金として残額がすべて償却される予定である。
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