本研究では、私立学校の幼稚園から高校までの複数学校種において、発達障害等の特別な配慮を要する幼児児童生徒の支援・教育をいかにして連続的に一貫して行えるかということを明らかにするために、様々な角度から実態調査を行って検証してきた。 その結果、私立学校の特別支援教育は公的支援がほとんどないなかで大きく遅れ,各校の自助努力に任される傾向がある。しかし私立学校は「ていねいできめ細やかな教育」による一人ひとりを大切にした指導、児童生徒の在籍が同一学校法人内の複数学校種に跨ることや教職員の人事異動がないといった「長い期間」の確保、複数学校種の「接続・移行がスムーズ」など、公立学校で課題となっている学校間接続に関わるプライオリティがみられた。こうしたプライオリティを活用することで、私立学校は、連続的な発達支援システムのなかで、在籍する発達障害等の特別な配慮を要する幼児児童生徒の発達を時間をかけて丁寧に支えることが十分に可能である。例えば調査において「公立と違い、転勤が少ないことから継続して特別支援教育に取り組むことができる。卒業後のサポートも充実させることができ、生徒・保護者の信頼を得られる」(私学協会)との意見もあった。学校法人が一貫して特別支援教育に取り組むことは多くの学校が「必要」ととらえており、私立学校の特性を活かした特別支援教育を示唆するものである。 今後、私立学校における特別支援教育の体制整備を促進することにより、従来の私立学校教育における「私立学校法と学校教育法」「独自性と公共性」という二項対立的な問題が次第に解消されて、特別支援教育を行うことが私立学校の「公共性」を担保するとともに、私立学校ならではの教育の「独自性」の可能性を広げていくと考えられる。私立学校においても特別支援教育を行うことは「すべての子どもに最適・最善の教育を準備する」という現代的意義を有している。
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