本研究は、知的障害のある自閉症児の社会参加・社会的自立をめざした中学部・高等部段階での教育プログラムを開発することを目的に、1)知的障害のある自閉症児のニーズに合致した指導目標の抽出方法の開発、2)般化を計画的に指導するための指導方法の開発、3)地域での自然な支援を促進する支援方法の開発について検討を加えてきた。 平成26年度は、共同研究を行う知的障害特別支援学校を1校増やし研究開発を進めてきた。また、自閉症教育の海外の最新の知見を踏まえた研究開発となるようアメリカでの自閉症教育の実際について視察を行った。 知的障害特別支援学校との協働研究から、1)について、生活調査アンケートを活用して生徒の実態把握を行うことが有効であり、生徒に必要な指導目標が具体化されることで、指導内容や指導体制の改善が促進されることも確認された。2)については、般化の視点を取り入れた単元計画の策定、課題整理表の作成、実際の場面で活用するための支援ツールの開発と、実地指導を軸とした繰り返しのある指導機会の設定が有効であった。3)については、地域と協動した授業を実現することが有効であった。その結果、生徒の理解と地域の支援力が向上し、知的障害のある自閉症児が実際の場面で必要な力を発揮できることが見出された。 アメリカでの自閉症教育の視察は、ミネソタ州とカリフォルニア州の知的障害のある自閉症児が在籍する学校の見学および管轄する教育省を訪問した。その結果、知的障害のある自閉症児の社会参加を実現するため、中学部から高等部にかけて地域に根ざした移行教育プログラムを重点に指導していること、また、専門的な指導を確保するため自閉症教育の専門とする教員やプログラムスペシャリストが指導の質を管理していることが確認された。 平成27年度中に、以上の研究成果についてまとめ日本特殊教育学会等で公表する予定である。
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