研究概要 |
1.千吉良直紀氏との研究により,Radvalis単純群に対する複素格子についてユニタリ群U_3(3)を出発点に,monomial部分群2^7.U_3(3)を用いた記述を定式化することが出来た。その結果,4060×6個のmimimal vectorの完全なリストを作ることができ,また,格子のtheta seriesを求めることができた。これは,今年度の研究において重視していた問題に一定の成果を与えたものである。この結果については,8月の代数学シンポジウムにおいて,千吉良氏による発表が行われており,論文として発表する準備を進めているところである。 2.2重可移群が作用するextremal符号の分類に関するMalevich-Willemsの論文で未解決であった1024次の符号について,Chigira-Harada-Kitazume(2007)の結果の応用として,その非存在の簡明な証明を与えた。これは,分類問題を完成させる重要なステップであると共に,本研究に至る過去の成果の応用例であり,一層の進展を期待させるものである。この結果については,千吉良氏および原田昌晃氏との共著論文としてまとめ,その掲載がすでに受理されている。 3.大学院の学生であった小西由紘氏の研究協力を得て,Mathieuの単純群M_24,M_12の正則な部分群の分類をおこなった。この結果を用いたWitt systemの構成は興味深い問題であるため,次年度以降の課題としたい。この結果については,台東大学(台湾)でのワークショップで発表した。 4.千吉良直紀氏および島倉裕樹氏との研究として,モンスター単純群の2シロー群の構造を詳細に記述することを目指して,その生成系について調べた。現時点では不完全なものであるが,本研究の基本方針である符号と格子を出発点とした研究の自然な流れでもあり,次年度以降の課題としたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度の計画において重視していたRudvalis群の複素格子の問題については,十分以上の成果を得ることが出来たと思われる。Thompson群とFischer群の問題は次年度以降の課題であるが,一方で,2重可移群に対する符号に関する問題についての成果があり,モンスター単純群の2-localの構造に対する研究をLeech格子とGolay符号を出発点に,研究の端緒を付けることが出来た。総合して,当初の計画以上の進展と評価できると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
基本的には,当初の研究計画を踏襲するところであるが,今年度に進展したモンスター単純群の問題については,重点的に議論を進め,一層の進展を目指したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
いくつかの出張旅費を他予算から出資することで,助成金の一部を次年度に回すことができた。次年度では,本研究の一層の進展のため,連携研究者との討論や,関連分野の研究者の新しい知見を取り込むための出張旅費,および,研究集会の報告集印刷の経費として活用する計画である。
|