研究課題/領域番号 |
24340002
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
北詰 正顕 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60204898)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有限群 / 単純群 / 散在型単純群 / グラフ / デザイン / 符号 / 格子 / 頂点作用素代数 |
研究概要 |
1. 千吉良直紀氏との研究により,昨年度から行っている Radvalis 単純群に対する複素格子に関するユニタリ群U_3(3)を用いた定式化を押し進め,格子の生成系や基底に関する計算,および,Radvalis 群の作用の計算を,計算機(ソフトウェアMagma)を用いて実行することができるようになった。その結果,Conway が示していた特別な7点集合や10点集合(heptad, decad) の存在について,新たな具体的な定義を与えることができた。その副産物(応用)として,Radvalis 群が作用する自己双対符号の生成系を heptad を用いて記述することができた。これは従前から進めていた,置換群が作用する自己直交符号に関する研究において求め続けていた重要な成果である。また,1点の固定部分群が作用する generalized octagon(これはランク3グラフの1点の近傍の構造を示している)の特徴付けと関わる部分構造(6次対称群から作られるsuboctagon)を,やはり,heptad を用いて取り出すことができることを示した。これは,Radvalis 群と Tits 群の関係を考える上で重要なステップである。以上の結果については,3月に台湾で行われたワークショップで成果の一部を発表し,来年度の9月の代数学シンポジウムにおける発表も予定されている。 2. モンスター単純群の2シロー群をGolay符号を用いて記述する研究を進めた。特に今年度は,Conwayによる Parker loop を用いた構成を検討し,そこから得られる群構造の理解に努めた。その結果,loop と群構造に関する新しい公式を見出すなどの部分的な成果を得た。現時点では,群の生成系について,望ましい形での理解には到っていないが,引き続き研究を進めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から重視していたRudvalis群の複素格子の問題については,格子の生成系や群の作用についての理解が大きく進展した。その結果,Rudvalis群が作用する自己双対符号について,その生成系を直接的に与えるという大きな成果を得た。さらにランク3グラフの1点の近傍の構造と関わる Tits 群との関連についても重要な前進を見た。また,モンスター単純群の2-localの構造に対する研究においても新たな知見を得ることができ,今後の研究の大きなステップになると思う。一方で,Thompson群とFischer群の問題については,準備的な考察を続けているところであるが,特記すべき成果を得ていない。総合して,おおむね順調に進展していると評価できるところである。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には,当初の研究計画を踏襲するところであるが,Rudvalis 群については大きな進展を得ているところであるので,完成形を目指して一層の進展を目指したい。自己双対符号の生成元の持つ性質や,1点の近傍における部分構造(suboctagon)の性質を明快に記述することが重要である。これらについては,昨年度来の研究計画の流れの中で処理できるものである。また,モンスター単純群の問題についても順調に進展しているところであるので,Parker loop を用いた群構造の記述について,さらに議論を深めてゆきたい。 一方で,特別な成果のなかった目標について,Fischer群の問題については,ごく最近に発表されたU_6(2)とM_22の関連を記述する結果に注目したいと考えており,今後の研究を進める上で,新しいアイディアにつながるものと思っている。Thompson 群については,Dempworff 群の構成を粘り強く求めて必要があると思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度における助成金の未使用額が比較的大きかったが,その多くの部分を研究打合せと研究発表のための旅費として使用することができた。連携研究者との直接の議論を円滑に進めることができ,研究成果を鑑みても,有効に活用できたものと思う。次年度にさらに回すことになったのは,前年度の未使用額が大きかったこともあるが,購入予定だった書籍の一部が電子パッケージとして別予算で一括購入されたことに起因する部分が大きい。 次年度においても,本研究の一層の進展のため,連携研究者との討論や,関連分野の研究者の新しい知見を取り込むための出張旅費,および,研究集会の報告集印刷の経費として活用する計画である。次年度の研究計画としては,従前のものから特別な変更なく遂行できるものと思う。
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