研究課題/領域番号 |
24340002
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
北詰 正顕 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60204898)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 有限群 / 単純群 / 散在型単純群 / グラフ / デザイン / 符号 / 格子 / 頂点作用素代数 |
研究実績の概要 |
1. Rudvalis単純群に対する28次元の複素格子に関する研究を継続して進めた。前年度末には,Conwayの特別な7点集合(heptad)の定義を与え,その応用として,4060次の自己双対符号の生成系との関連や,Tits群に対応する幾何の部分構造との関連を示すという成果を得ていた。今年度は,これらの関連の記述において重要な役割を果たしているHoffman-Singletonグラフの具体的な構成を用いて,上記の生成系や部分構造をより具体的に記述することを試みた。その結果,6次対称群からのグラフの構成をもちいることで,ある程度満足できる記述ができることがわかった。ここから,複素格子やTits群の幾何の全体像をつかむことを,今後の検討課題としたい。以上の成果の一部については,8月の代数学シンポジウムで発表を行った。 2. 上記のHoffman-Singletonグラフは,12次のMathieu群やMcLaughlin群,Conway群とも深く関連している。Mathieu群からのMcLaughlinグラフ(あるいは,ほぼ同値な結果として,Conway群に対するregular 2-graph)の新しい構成を得た。また,Hoffman-SingletonグラフからのMcLaughlinグラフの新しい構成を試みた。現時点では部分的ではあるが,新しい知見を得ている。本件については,3月の台湾でのワークショップでの発表を行った。 3. 12次のMathieu群について,Margolinが定義した45次元格子と,Wajimaによる45次元の非結合的可換代数について考察を行った。今年度の成果として,格子の最小ノルムのベクトルを求め,格子の構造を用いて可換代数の構造定数を求めることができた。これらを用いて,全自己同型群の決定を目指すことが,次の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rudvalis群に関する研究は,昨年度までに一定の成果を得ており,今年度においては,その研究成果をまとめる段階となった。次の段階へ進むステップとしては,準備的な成果として,Hoffman-Singletonグラフを用いた具体的な表示を得た。また,Hoffman-Singletonグラフに関する考察の,自然な延長として,McLaughlin群やConway群との関連において,新しい知見を得ており,McLaughlinグラフの新しい構成に向けて良い方向性を得たと思われる。さらに,Mathieu群とMargolin格子,および,可換代数について着目したことは,頂点作用素代数に関連する事項としても興味深いものと思われ,今後の進展が楽しみなものになっている。一方で,不本意ながら,Fischer群やThompson群の問題については,特記すべき進展はなかった。以上を総合して,研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には,これまでの方針を踏襲する。Rudvalis群に関する研究においては,これまでの研究成果を良い形にまとめて公表することが目標である。さらに,関連するTits群の幾何について,具体的な表示を用いた特徴付けなどについて研究を進めたい。そこでは,Hoffman-Singletonグラフが重要な役割を果たすと思われ,関連するMcLaughlinグラフの研究も連動する形で進むものと思われる。また,Mathieu群の格子と可換代数については,いわゆるMathieu Moonshineとの関連を意識しながら,連携研究者・頂点作用素代数の専門家との連絡を密にしながら進めたいと思う。進展の少なかった問題については,新たな着眼点を模索することも含めて,粘り強く進めたいと思う。
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次年度使用額が生じた理由 |
講演記録(報告集)の印刷・製本が諸事情から年度内に間に合わなかったため,次年度に行うこととした。また,いくつかの出張を取りやめたことにより,次年度使用額が生じた。さらに,平成27年度初頭に出版予定の専門書が予告されており,これらを購入するための費用を繰り越した部分もある。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度においても,代数的組合せ論シンポジウムと,有限群論草津セミナーにおいては,本研究と密接に関連する研究者による講演を依頼する予定であり,その報告集を作成する予定である。これらの集会における出張旅費の支出に加え,連係研究者を始めとする関連分野の研究者との研究連絡については,今年度と同様に,もしくはそれ以上に,重要視する予定である。これらのために,現状の使用額は適切に使用できるものと考えている。
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