研究概要 |
平成24年度は,以下の2点について研究を行った. (1)複素解析写像で特異点が局所変形に関して安定であるものを構造安定写像と呼ぶ.多重安定特異点のあるタイプに対して,そのタイプの特異点集合あるいは特異値集合が与える基本類は,安定写像の相対チャーン類およびランドウェーバー・ノヴィコフ類と呼ばれるコボルディズム不変量のある普遍多項式(トム多項式)によって表示される(トム・カザリアン理論,ただし,その一部は予想).この一般化として,基本類だけでなく特異チャーン類に関しても同種の普遍多項式の存在を予想し,いくつかの具体的な次元においてその証明および具体的な表示を与えた.申請者によるこの新しい理論は,今までほとんど出来なかった写像芽のイメージミルナー数等の不変量の具体的計算についてブレークスルーとなり得る.この研究ついて,サンカルロスでの大規模な国際特異点研究集会で連続講演を行った. (2)一般次元の準射影的非特異多様体上の点のヒルベルト・スキームは一般に特異である.これに対して(申請者自身の先行研究である特異チャーン特性類公式を発展させて)普遍オイラー標数およびヒルツェブルフ特性類の理論を適用し,ヒルベルト・チャウ射が誘導する準同型によるヒルツェブルフ特性類の像の生成母関数に関するオイラー積公式を完成させた.これは代数多様体のグロタンディエク環における「べき構造(power structure)」(フゼインザーデ・ルエンゴ・ヘルナンデス)を相対化し,その特性類版を与えたことに相当する.これはS.キャペル(ニューヨーク市大),L.マキシム(ウィスコンシン大),J.シュアマン(ミュンスター大),與倉昭治氏(鹿児島大)との共同研究である.
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次年度の研究費の使用計画 |
日仏越特異点シンポジウム(ニース,9月),2つのRIMS研究集会(京大,11月)等において,研究遂行上にたいへん意味を持つ研究者の招聘や出張依頼および申請者等の海外渡航の費用を主要な支出先とする.
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