研究課題/領域番号 |
24340009
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
山田 澄生 学習院大学, 理学部, 教授 (90396416)
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研究分担者 |
大鹿 健一 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70183225)
山口 孝男 筑波大学, 数理物質科学研究科(系), 教授 (00182444)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | タイヒミュラー空間 / ベイユ・ピーターソン幾何学 / 凸幾何学 / CAT(0)幾何学 |
研究概要 |
平成25年度の研究活動の主なるテーマは、①凸幾何学のフィンスラー幾何学への応用、②アインシュタイン方程式の解の変形理論に関するペンローズ不等式とそのアインシュタイン・マックスウェル方程式への一般化,であった。 前者の課題には、定曲率空間上の凸体の上に正準的な弱距離関数を定義し、その性質を研究連携者のAthanase Papadopoulos氏との共同研究として論文を発表した。また曲率が可変であるタイヒミュラー空間上に、これらの定義される正準的な弱距離関数の一般化を定式化した。 後者の課題に関しては、漸近的平坦な3次元多様体上に定義される漸近普遍量の間に成立する不等式を確立した。この新しい結果は3次元多様体の正スカラー曲率を持つリーマン計量の変形空間の漸近的な構造と密接に関わっている。この不等式に関する結果を今年度Gilbert WeinsteinとMarcus Khuri両氏との共同研究として論文を2本発表し、また現在もう一つ論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベイユ・ピーターソン距離関数に関して、タイヒミュラー空間は凸体と認識され、さらにその境界集合はカーブ複体によって与えられる離散的な滑層構造を持っている。凸体上に 正準的に定義されるHilbert計量とFunk計量は一般に境界の幾何構造が決定するが、タイヒミュラー空間という非等質性を持つ空間の内部構造を境界の構造との対比を介して究明するという新しい視点が、本研究課題の本年度の進展として挙げられる。もう一方でスカラー曲率が非負であるリーマン計量の変形空間の大域的構造を掌握するため手段としてのペンローズ不等式の新解釈が本年度に新たに得られた知見から得られたことは、本研究課題の方向性を正当化するものであると考える。
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今後の研究の推進方策 |
まず最初の課題である「凸幾何学のフィンスラー幾何学への応用」に関しては、ベイユ・ピーターソン距離関数を介して定義されたFunk計量の挙動が、タイヒミュラー空間の共形集合の形状の解析を経ることで、逆にベイユ・ピーターソン距離関数の特徴付けを与えるという方向性を探求する。2つ目の課題である「アインシュタイン方程式の解の変形理論に関するペンローズ不等式とそのアインシュタイン・マックスウェル方程式への一般化」はブラックホールの連結成分が複数であるMajundar-Papapetrou厳密解の変形空間が、リーマン計量の変形空間の境界と解釈できる知見をもとに、ペンローズ不等式の剛性に伴う幾何学的な状況の特定を進める。 これら2つの課題は一見相関性のないもののように見受けられるが、ともにリーマン計量のモジュライ空間の退化現象を捉える方策として統一性のあるものであり、それらの間に共鳴性を見いだすことを大きな目標として設定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年9月に予定していた中期アメリカ出張(バークレイMSRI研究所で開催された数学的相対性理論ワークショップへの参加)を、近親の急病のため見送ることになった。また同12月に10日間程度の招聘を予定していたアメリカの研究者の来日が先方の都合で取りやめになった。 昨年度招聘が叶わなかったアメリカの研究者の来日を本年度再度企画する。また9月にフランス・ストラスブルグで相対性理論に関する研究集会を主催する際に必要となる経費に、昨年度からの持越金を当てる。
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