研究課題/領域番号 |
24340011
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古田 幹雄 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (50181459)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 幾何学 / トポロジー |
研究概要 |
○成果の具体的内容 (1)古田幹雄はTian-Jun Li氏との共同研究によって3次元スピン有理ホモロジー3球面に対して、Pin(2)同変Seiberg-Witten Floerホモトピー型およびSeiberg-Witten Floer Pin(2)同変Kコホモロジーを定式化した。さらにその応用として境界のある4次元コンパクトスピン多様体に対して、10/8タイプの不等式を得た。 (2)中村信裕はPin(2)構造に対するSeiberg-Witten方程式の応用として新しいnon-smoothable4次元多様体の族を構成し、また10/8タイプの不等式をスピン構造をもたないある種の4次元閉多様体に拡張した。 (3)福本善洋と古田幹雄との共同研究においてDonaldon理論の応用として複数のレンズ空間の間の同境についての命題が得られた。 ○各々の成果の意義、重要性 (1)について:Donaldson理論、Heegaard-Floer理論においてはFloerホモロジーの安定ホモトピー的精密化であるFloerホモトピー型は構成されていない。一方SW理論においてはManolescuが有理ホモロジー3球面に対してFloerホモトピー型を構成し、さらにスピン有理ホモロジー3球面においてはPin(2)同変Floerホモロジー群をZ/2係数において構成していた。Manolescuは後者の著しい応用としてtriangulation予想の否定的解決を与えた。しかしこれらの構成では10/8タイプの不等式の拡張は得られない。この欠落を埋める構成が上記(1)である。 (2)について:スピン多様体に付随する荷電共役を、非スピン多様体においても二重被覆の存在のもとで拡張する可能性が数年前に古田によって指摘された。中村の一連の仕事はこの可能性が実際に4次元トポロジーにおける新しい位相的帰結を導くものを示すものである。 (3)について:Seiberg-Witten理論、Heegaard理論などの他のゲージ理論的手段によっては現在アプローチの方法が見いだされないものである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Seiberg-Witten Floer K埋論について当初の予想を超えた進展と発見があった。そのため当初の計画を修正し、この進展と関わるTian-Jun Li氏との共同研究に重点を置いた研究を行なっている。結果として、当初の計画そのものについては想定された地点までは到着しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
Seiberg-Witten Floer K理論について重点をおいた研究計画へとシフトする。そのためSeiberg-Witte nFloerホモトピー群に造詣の深い若手研究者との研究協力をより密接に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究による知見が当初の想定と一致しなかったため研究費を柔軟に使用する必要が生じ、繰越を行った。この新たな知見に関連する部分においては亀谷幸生氏(慶応大)、中村信裕氏(学習院大)、笹平裕史氏(名古屋大)、Tian-Jun Li氏(ミネソタ大)、T. Khandhawit氏(IPMUボスドク予定)との研究協力を行い、関連した情報収集および情報発信のため海外の集会に参加する。
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