研究概要 |
有限時間高頻度観測における確率回帰モデルのボラティリティの疑似尤度解析において,疑似尤度比確率場の大偏差的性質が本質的になり,そのために,ある統計的確率場のパラメータに関する一様な非退化性が重要となる.確率場を定める関数の零点集合が正則多様体でない場合に非退化性を保証する判定条件を見つけた.この結果はStochastic Processes and their Applications(SPA)のInternational Year of Statistics記念特別号に,内田雅之氏との共著論文として掲載予定である.極限が混合正規となるマルチンゲールの漸近展開は,有限時間高頻度データに基づくボラティリティ推定問題において,推定量の分布の高次近似を得るために不可欠である.これは伝統的な漸近展開理論の枠を越える新しい極限定理であるが,筆者によって最近導出された(SPA20120n-line).応用として,realized volatilityの漸近展開が得られる.p-変動への応用は,MPodolskij氏との共同研究で結果が得られた.時間局所的にWiener-Ito展開を持つ汎関数に対して,adaptive random symbolを特定し,漸近展開公式を得た.また,マルチンゲール展開の精密化の研究を進めた.ボラティリティの推定問題はとくに非同期観測におけるパラメトリック推定は結果が皆無と言える.荻原哲平氏との共同研究で,有限時間非同期高頻度観測下で,疑似尤度解析を構成し,推定量の漸近混合正規性を与えた.推定量の漸近挙動の記述には,非同期観測から決まる観測区間のアソシエーション行列のレゾルベントの漸近挙動が本質的になることを示した.C.Laredo氏らと確率ボラティリティモデルの汎関数の経験分布関数に対して,高頻度長期観測下における分布の漸近展開について研究した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
極限が混合正規の場合のマルチンゲール展開は伝統的な漸近展開理論に収まらないものであり,それが成り立つための十分条件をすこし弱めるといった技巧的なレベルでの精密化の可能性がまだ残されている.その追求に研究の一部が向かったためスケジュールはタイトになったが,この成果の上,全体的にはおおむね順調に研究は進行した.
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