研究課題/領域番号 |
24340018
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
渡部 善隆 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 准教授 (90243972)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 応用数学 / 関数方程式論 / 微分方程式 / 精度保証 / 計算機援用証明 |
研究概要 |
昨年度からの研究の継続として,これまでに得られた2階楕円型偏微分作用素に対する可逆性の検証条件,1次元Orr-Sommerfeld方程式の線形化逆作用素の有限次元作用素による一様近似の知見を取り込みながら,無限次元線形作用素の可逆性の検証と逆作用素の精度保証付きノルム評価方法を可能な限り一般的な関数空間と作用素に拡張した理論として整備した.また,この一般理論によって得られる逆作用素ノルム評価が,有限次元作用素による一様近似となるだけでなく,従来の方法では得ることのできなかった下限の制約がない最適評価を導くことを立証するための具体的検証例を与えた.また,各種の実問題から導かれる行列に対する計算機援用証明を通し,摂動理論と浮動小数点演算の事後誤差評価を併用することにより行列構造を維持しながらスペクトルノルムの上界を精度保証付きで求めるアルゴリズムの効率化を行った.さらに,これまでの成果を非線形関数方程式の線形化作用素に適用することにより,無限次元Newton法に基づく非線形方程式の解に対する精度保証付き数値計算に応用した.具体的には,これまでの手法での存在検証と誤差評価が必ずしも十分に達成されていない高Reynolds数の流体方程式,特異摂動問題,3次元熱対題,自然境界条件を持つ反応拡散方程式系の各定常問題に対する計算機援用証明に取り組んだ.また,個々の方程対し,精度保証付き数値計算をアルゴリズムレベルおよびプログラムレベルにおいて効率化する過程で得られた知見を基盤技術にフィードバックすることにより,線形作用素に対する逆作用素理論を堅牢化・精錬化した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らはこれまで,2階楕円型偏微分作用素に対する可逆性の検証条件を導き,さらに1次元Orr-Sommerfeld方程式の線形化逆作用素の有限次元作用素による一様近似に成功している.これら個別の方程式に対する成果・知見を取り込みながら,無限次元線形作用素の可逆性の検証と逆作用素の精度保証付きノルム評価方法を可能な限り一般的な関数空間と作用素に拡張した理論として与えることに成功した.また,この一般理論によって得られる逆作用素ノルム評価が,有限次元作用素による一様近似となるだけでなく,従来の方法では得ることのできなかった下限の制約がない最適評価を導くことを立証した.その結果,得られた知見の一部を連携研究者・海外共同研究者との共著論文としてまとめたものが,応用数学・数値解析で著名な雑誌である SIAM Journal on Numerical Analysis に掲載されることとなった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに得られた成果をさらに発展させ,非自己共役固有値問題に対する解の存在・非存在検証,定常Navier-Stokes方程式の解の検証と解の安定性解析,さらに非線形発展方程式の解の存在検証と数理モデルの安定性解析へと展開したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
年度当初海外共同研究者をドイツから2名招聘するために確保した旅費を次年度研究代表者の海外渡航費に振替えるように研究計画を改めたため. 主として研究打ち合わせ・資料収集の旅費および成果発表費用として使用する予定である.特に前年度からの繰り越し分は海外共同研究者2名の所属するドイツ・カールスルーエに滞在し共同研究を推進する旅費として予定している.
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