平成24年度・平成25年度の研究成果として、2階楕円型偏微分作用素に対する可逆性の検証条件を精緻化・一般化することにより、無限次元線形作用素の可逆性の検証と逆作用素の精度保証付きノルム評価方法を可能な限り一般的な関数空間と作用素に拡張した理論として与えることに成功した。また、この一般理論によって得られる逆作用素ノルム評価が、有限次元作用素による一様近似となるだけでなく、従来の方法では得ることのできなかった下限の制約のない最適評価を導くことを具体的検証例とともに明らかとした。
また、精度保証付き数値計算による無限次元逆作用素の最適評価の基盤技術を、非線形関数方程式の線形化作用素に適用することにより、無限次元Newton法に基づく非線形方程式の解に対する精度保証付き数値計算への応用に着手した。具体的には,これまでの手法では解の存在検証と誤差評価が必ずしも十分に達成されていない高Reynolds数の流体方程式、特異摂動問題、3次元熱対流問題、自然境界条件を持つ反応拡散方程式系の各定常問題に対する計算機援用証明に取り組み、個々の方程式に対し,精度保証付き数値計算をアルゴリズムレベルおよびプログラムレベルにおいて効率化する過程で得られた知見を従来の研究成果にフィードバックすることにより、線形作用素に対する逆作用素評価理論を堅牢化・精錬化を行った。
さらに、無限次元固有値問題に対する固有値・固有関数の包み込みおよび固有値除外手法への拡張を検討した。具体的には、Hilbert空間における固有値問題の存在・非存在証明が、自己共役問題だけでなく、固有値が一般に複素数となる非自己共役問題にも適用可能であることを、移流拡散方程式、周期境界条件を持つ反応拡散方程式などの非自己共役作用素に対する精度保証付き数値計算により立証する研究を行った。
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