研究課題/領域番号 |
24340021
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
太田 克弘 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40213722)
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研究分担者 |
藤沢 潤 慶應義塾大学, 商学部, 准教授 (00516099)
田村 明久 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (50217189)
石井 一平 慶應義塾大学, 理工学部, 非常勤講師 (90051929)
小田 芳彰 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (90325043)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | グラフ理論 / 極値問題 / シータグラフ / グラフマイナー / 彩色問題 / マッチング拡張性 |
研究実績の概要 |
グラフ理論における最も有名な未解決問題の一つにHadwiger予想がある.これは,k+1頂点の完全グラフをマイナーとして含まないグラフは,k-彩色可能であろう,というもので,平面グラフに対する四色定理の一般化かつ拡張となっている.今年度の研究において,完全マイナーと彩色を結びつける概念である,ρ彩色について研究を行った.まずこの概念の導入により,Hadwiger予想を弱めた「次数列に関するHadwiger予想」の簡潔な証明を与えた.また,ρ彩色と,Hadwiger数,染色数の関係について調べ,一定の成果を挙げた. また,昨年度顕著な進捗のあった点素なシータグラフの存在に関する極値問題の研究をさらに推し進めた.これまでの研究で,k個の同型なシータグラフを点素に見つける問題は,kが3以上のときに解決していた.これに対し,新たなアプローチを試みることにより,すべてのkについて,最小次数 2k+1 以上の十分大きなグラフにそのような構造が含まれることを証明した.帰結として,同じ長さの点素な偶サイクルの存在に関する結果も導かれる.この研究結果の手法を精査することにより,さらに一般化された極値問題に対する知見も得られる見込みが立った. この他,部分グラフを全域部分グラフに拡張する研究の一つとして,マッチングの拡張性に関する研究,とくに平面や射影平面上の三角形分割におけるマッチング拡張性について,既存の結果を改良し,最善の値を決定することに成功した. 成果については,9月に開催された日本数学会秋季総合分科会,12月に開催された応用数学合同研究集会,などで発表した.また2016年2月には,慶應義塾大学において若手研究者らの活発な研究者交流および研究討論を目的とした研究集会を開催,2016年3月には,組織委員として国際会議 The 4th Japan-Taiwan Conference on Combinatorics and its Applications に参加し,国内外の研究者と情報交換を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
グラフマイナーと彩色問題を結びつける概念であるρ彩色を新たに導入し,Hadwiger予想に関連する新たな知見を得ることに成功した.平面三角形分割における完全マッチングへの拡張性に関する研究が,射影平面グラフやクラインボトル上のグラフに対して広がった.また,点素なシータグラフについては,目標としていた最善の最小次数条件を得るところまで研究が進展し,懸案となっていた k が 2 の場合も含めた形で証明できる新たなアプローチが成功した.さらなる一般論を構築する研究の方向についても,国内外の研究者との討論を重ねており,さらなる進捗が見込まれている.以上により,研究は期待以上に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
ρ彩色とHadwiger数,通常の染色数の関係については,まだ研究の端緒についたばかりである.これらの不変量がどのようなグラフで一致し,どのようなグラフで大きく異なるか,などは基本的であるが興味深い研究テーマであり,さらなる解明を進める.またρ彩色の概念はマイナーに関して単調な性質であるため,ρ彩色数が低いグラフに対する禁止マイナーに関する研究も行う. 弦付きサイクルやシータグラフの研究においてキーとなったのは,辺の数の少ないグラフ(頂点数 n は十分大きく,辺数は n の線形関数であるようなもの)において,頂点数が n に比べて十分小さいオーダーの弦付きサイクルやシータグラフが発見できたことにある.この事実を踏まえ,弦付きサイクルやシータグラフに関する極値問題を,さらに一般化された構造に拡張する試みを行う. またマッチング拡張性については,三角形分割以外のグラフに範囲を広げて考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
辺が密でないグラフの極値問題において,当初の研究計画より幅広く適用可能な成果が得られる見込みが立った.そのための新展開に予想以上の時間を要し,理論の完全な完成にはいたらなかった.研究成果の部分的な公表を控え,取りまとめに優先的に時間を費やしたため,旅費等の経費の未使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
上記の研究を完成するための研究打合せ旅費,成果発表するための研究集会・国際会議参加のための旅費として使用する.国際会議では,5月に京都で開催される The Japanese Conference on Combinatorics and its Applications (JCCA 2016) へ組織委員として参加し,内外の多くの研究者と情報交換を行う.また,3月にフロリダ(米国)で開催される Southeastern International Conference on Combinatorics, Graph Theory, and Computing, 国内研究集会では,8月に開催される離散数学とその応用研究集会,龍谷大学で12月に開催される応用数学合同研究集会,9月および3月に開催される日本数学会等への参加,発表を計画している.
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