研究課題/領域番号 |
24340026
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河合 隆裕 京都大学, 数理解析研究所, 名誉教授 (20027379)
|
研究分担者 |
竹井 義次 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (00212019)
小池 達也 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (80324599)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 仮想的変わり点 / 完全WKB解析 / 超局所解析学 / 陪特性帯 / Whitneyの傘 / 超局所解析的S-行列論 / Landau-中西幾何学 / 再生函数論 |
研究実績の概要 |
1.河合・竹井が本多尚文(北海道大学)と協力して“Virtual Turning Points”なるmonographをSpringer社から出版した。この主題に関する成書としては世界最初のものであり、しかも国内の若い研究者(廣瀬三平氏(芝浦工業大学)、佐々木真二氏(近畿大学)等)からこの書の内容に触発されての仕事を、“間髪を入れず”と云う感じで、(口頭)発表(本論文は近日刊行予定)して下さったことをとても嬉しく思っている。同時に廣瀬氏が(上掲書で初めて公表した)s-virtual turning pointなる概念を、同氏がかねてより興味をお持ちの“単純特異点を持つ写像の普遍開折”と関連付ける研究を提起されたことは我々(河合・竹井)にとっても大変良い刺戟であり、又 首藤啓氏(首都大学東京;物理教室)の進めていらっしゃる“量子多項式写像のストークス幾何学”の研究とも深く関り合っており、超局所解析学・数理物理学・完全WKB解析と云う3つの主題の合流点に位置する研究になると期待している。やはり書籍刊行のimpactは大きいようである。 2.河合が本多尚文と協力して“超局所解析的S-行列論”の紹介論文を執筆(近刊予定)して若い研究者からの反応を探っている。特に計算機の援用による理論の深化を期待する。同時に河合・本多が見出だし、上記論文でも強調したLandau-中西(=LN)曲面とWhitneyの傘との関連は超局所解析学に重要な課題を提起しており、さらに最近発見された“縮約グラフの定めるLN多様体が余次元2である時、実はpinch pointが絡んで来る”と云う事実は超局所解析的S-行列論でこれ迄注意されなかっただけに今後の進展が期待される。 3.河合・小池が神本晋吾(広島大学)と協力して、無限階微分作用素の観点から、真性特異点を持つ再生函数の具体的解析を行った。(近刊予定)
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者 河合及び分担者 竹井の研究の進展は順調であり、そのことは本多尚文氏と共著の“Virtual Turning Points”なるmonographをSpringer社より刊行したことでも裏付けられる。しかし分担者 小池の研究に関しては、河合及び神本晋吾氏との再生函数論に関する部分は順調に進展しているものの、本務の多忙さの為にR. Schaefke教授(ストラスブール大学;フランス)との共著の“2階方程式のWKB解のボレル総和可能性の証明論文”の執筆が(証明の日本語版は完成しているにもかかわらず)遅れている。勿論本務の多忙さはよく理解できるので、何とか28年度には河合・竹井が支援してこの遅れを取り戻したいと思っている。
|
今後の研究の推進方策 |
前項で述べたように、小池の執筆予定の論文の完成が遅れているので、何とか河合・竹井の支援により早期の日本語原稿の翻訳完成を期したい。この点に関しては共著(予定)者 R. Schaefke氏にも昨年訪日の際強くお願いしたので、28年度中には“終り良ければすべて良し”と云う形にできると期待している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年10月5日~10月9日に、竹井が代表者となって開催した国際研究集会“超局所解析と特異摂動論”にE. Delabaere教授(アンジェ大学・フランス)の招待予定が、同教授の御家族の御不幸の為、急に取消さざるを得なくなった。この予定変更が原因である。
|
次年度使用額の使用計画 |
幸いに平成28年10月に、我々との研究連絡が緊密になされている本多尚文氏(北海道大学)が代表者となって“超局所解析と特異摂動論の新展開”なる国際研究集会を数理解析研究所で開催される予定(数理解析研究所の共同利用事業の一つとして承認済)なので、この会の主要参加者としてDelabaere教授を招待したい旨本多氏にお願いし、了解を得た。同時にDelabaere教授にもその旨連絡し、今秋の訪日の了解を得た。従って“次年度使用額”は同教授の旅費・滞在費として使用する予定である。
|