研究概要 |
1.時間周期平行流解の線形化安定性解析を行った.線形化発展作用素の部分的フロケ表現を導出し,解の漸近挙動の詳細を解明した.成果を原著論文にまとめ投稿した. 2.n次元周期的層状領域における圧縮性Navier-Stokes方程式の静止定常解のまわりの線形化半群の漸近挙動の研究を行い,線形化半群は時間無限大においてある(n-1)次元定係数2階楕円型作用素が生成する半群のごとく振る舞うことを示した.この方面の先行研究には,二つの平行な超平面に挟まれた層状領域に対する結果が知られていたが,それを単に拡張したばかりでなく,漸近挙動を記述する2階楕円型作用素を決める実対称行列が基本周期領域上のStokes方程式の一次独立な解を用いて表されるという性質を明らかにした.超平面に挟まれた層状領域においては無限に広がる方向に関するFourier変換を用いてスペクトル解析がなされたが,周期的層状領域の場合には単純にFourier変換を用いることができないため,新たにBloch分解を導入して,線形作用素の摂動論や非圧縮流体に対するStokes方程式の解の評価などを用いて解析を行った.その際,通常のStokes方程式の解の評価だけでは不十分であり,ある種の摂動項付Stokes方程式に対する評価を新たに導出して結果を得ることに成功した. 3.全空間における圧縮性Navier-Stokes方程式の時間周期問題を考察し,空間次元が3以上の場合に,ある種の対称性をもつ十分小さな時間周期外力に対して時間周期解の存在と安定性を示して先行結果を改良した.先行研究では,空間次元が5以上の場合に十分小さい時間周期外力に対して時間周期解が存在し,その時間周期解は安定であるという結果が得られていた.この研究では空間次元に対する制限を物理的に意味のある3次元も含む範囲まで緩和した.この結果を証明するために新たに線形化方程式に対するモノドロミー作用素の重み付きSobolev空間におけるスペクトル解析を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平行流型時間周期解および周期的層状領域上の静止解の線形化安定性に関して詳細な解析結果を得ることができ,また全空間上の時間周期解の存在と安定性を証明することができた.なお平行流型時間周期解の非線形安定性については研究協力者の大学院生によって解決された.分岐問題については,Taylor-Couette問題や平行流型定常流解の線形化作用素のスペクトル解析を行い,研究の方向性を見出すことができた.
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