研究概要 |
本研究では,水底に凹凸がある場合の水の波の浅水波近似および長波長近似の数学的に厳密な正当性を与えることを目的としている.特に,水底の凹凸の水平方向の空間スケールが水面のそれよりも非常に小さく,周期的に変化している場合を扱う.このとき,適当な無次元変数で水底を表わすとz=εb(x/ε)というグラフ状の曲面になる.ここでεは無次元パラメーターであり,関数b(・)は周期関数である. 水の波は重力場の下での非圧縮・非粘性流体の渦なし流に対する自由境界問題として偏微分方程式系によって数学的に定式化される.浅水波近似は水深と比較して波長が非常に長い波として,長波長近似は無限小振幅の浅水波近似として,それぞれ特徴付けられる.本年度は,2次元空間における浅水波近似の研究に的を絞った. 本来ならば,浅水波極限と同時にε→0とする極限を調べなければならないのであるが,まず均質化過程を詳しく調べるために,先に浅水波極限を行いそれから均質化ε→0を行うことを調べた.先行結果で浅水波極限に対する厳密な証明が与えられているので,水底の形状がz=εb(x/ε)というグラフ状の曲線になっている場合の浅水波方程式に対して,均質化(ε→0)を調べることになる.本年度は,その均質化に対する数学的に厳密な正当性を与えた.すなわち,極限方程式は水底が平らな場合の浅水波方程式になり,対応する解の収束性を証明した.さらに高次近似を調べることにより,εという小さなオーダーではあるが,水面が激しく振動することを示した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究実績を踏まえ,次のステップとして,浅水波近似の高次近似に当たるGreen-Nagdhi方程式あるいはBousinessqタイプの近似方程式に対して,浅水波近似(δ→0)と均質化(ε→0)を同時に行うことを考える.これらの近似方程式は,水の波の基礎方程式系と比較して扱いやすい方程式であるから,これら二つの極限の関係を理解するのに役立つと期待される.今後の主要な研究方法は本年度と同様で,研究代表者,研究分担者,連携研究者が独立に行う紙面上での手計算である.そして,それを基にして互いに研究討論を行い,目的達成のための新しい視点・方法を模索する.また,国内外にて開催される研究集会に積極的に出席し,最新の研究成果の情報収集を行う.さたに,国内外の研究者を招聘し,セミナーで最新の研究成果の詳細を解説して頂くと同時に研究討論を行う.
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