研究課題/領域番号 |
24340030
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
井口 達雄 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (20294879)
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研究分担者 |
谷 温之 慶應義塾大学, 理工学部, 名誉教授 (90118969)
高山 正宏 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (90338252)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 流体 / 水の波 / 関数方程式 / 浅水波近似 / 変分構造 / Euler-Lagrange方程式 / 国際研究者交流 / フランス |
研究実績の概要 |
本研究では,水底に凹凸がある場合の水の波の浅水波近似および長波長近似の数学的に厳密な正当性を与えることを目的としている.水の波は重力場の下での非圧縮性・非粘性流体の渦なし流に対する自由境界問題として偏微分方程式系によって数学的に定式化される.浅水波近似は水深と比較して波長が非常に長い波として,長波長近似は無限小振幅の浅水波近似として,それぞれ特徴付けられる. 本年度は,まず水の波の浅水波近似に的を絞り研究を行った.特に,水の波の基礎方程式系が有する変分構造を利用した近似方程式の初期値問題を考察した.その変分構造は Luke (1967) によって見出されていることはよく知られている.そのLukeのラグランジュ関数における速度ポテンシャルを適当な関数系を用いて近似し,近似ラグランジュ関数に対するオイラー・ラグランジュ方程式が近似方程式であり,海岸工学の分野で提唱された.その近似方程式に対しては,時刻 t=0 が時空間における特性曲面になっており,その初期値問題は一般には可解でない.本研究では,その初期値問題が可解になるための必要十分条件を与えた.さらに,自明解の周りでの線形化方程式系は浅水波近似と見なせることができ,しかも,高次近似方程式として知られている Green-Naghdi方程式よりも,さらに高次の近似になっていることを証明した.しかし,本来の非線形方程式に対する正当化は今後の課題として残された.
次に,粘性および表面張力が浅水波近似に与える影響も考察した.この場合,浅水波近似は薄膜近似とも呼ばれる.斜面を下る液膜の薄膜近似の正当性を与えることを念頭に置き,Reynolds数,斜面の傾斜角は小さいという技術的な制限がつくものの,無次元化した基礎方程式系の解に対して,液膜の厚みと代表波長の比である無次元数に関する一様評価を導出した.
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