研究課題/領域番号 |
24340042
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研究機関 | 独立行政法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
土居 明広 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 助教 (90403641)
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研究分担者 |
永井 洋 国立天文台, チリ観測所, 准教授 (00455198)
萩原 喜昭 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 助教 (60399300)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 天文学 / ブラックホール / 電波天文学 / 活動銀河核 / ジェット / VLBI / 位置天文学 / 降着円盤 |
研究実績の概要 |
ブラックホール(BH)について、シュバルツシルト半径(Rs)に匹敵する精度で位置決定+BH周辺を撮像するという組み合わせ手法「多周波相対VLBI」により、AGNにおける「3つの根源的問題」に挑むのが、本申請の研究の目的である: (A) Sgr A* や低光度AGNの主エネルギー発生源は、降着円盤か?ジェットか? (B) ブレーザーや電波銀河のγ線放射領域は BH から 何 Rs の地点に存在するか? (C) 降着エネルギー開放の現場であるBH近傍 1-10000 Rs での質量降着流の空間構造は?。 Nature誌に発表した我々の成果は、新しい観測手法を実用化し M87 の観測に適用したことによるものであった。これを重要な天体群にも適用し、研究を発展させるプロジェクトである。 平成26年度研究実施計画は: (1) 質量降着流の空間構造に直接撮像で迫る研究の成果をまとめる (NGC 4261, 3C84, or Mrk 348)。 (2) ジェット径の空間発展プロファイルとガンマ線放射源調査のアプローチから、ジェットの加速・収束メカニズムに迫る (M87, 1H0323+342, NGC 4261, or Cen A)。 (3) 本研究課題の手法に時間領域を加えたアプローチ、より高周波帯領域を加えたアプローチなど、新たな研究領域の開拓に発展しうる研究と検討をおこなう。であった。 当該年度に実施した研究成果は:(i) NGC 4261 と 3C84 については学術論文として出版した。(ii) Mrk 501, Mrk 421 での成果について学術論文として発表した。M87 については新たなデータを取得でき、データ解析をおこなった。1H0323+342, NGC4261, Cen A については論文執筆中である。(iii) 3C120 について時間領域を加えたアプローチで研究をおこない学術論文として出版・学会発表をおこなった。また、230GHz でのVLBI観測からM87のBH近傍におけるジェットの理論的研究で学術論文として出版した。また、ALMA での低光度AGNについての観測を新たにおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
査読付き学術論文 13編、学会発表6件、その他国際研究会での発表多数など、大変多くの科学成果を発表することが出来た。 査読付き論文は、H24年度の15編, H25年度の14編に引き続き、申請時の目標(2編/年)を大幅に上回る成果発信をすることができた。 科学的な内容としても、H26年度は大きな進展があった。H24年度では、解明に向けて掲げた3つの根源的問題の一つ、(B) ブレーザーや電波銀河のγ線放射領域は BH から 何 Rs の地点に存在するか? について、H25年度では (A) Sgr A* や低光度AGNの主エネルギー発生源は、降着円盤か?ジェットか? について、大きな進捗があった。 H26年度では、(C) 降着エネルギー開放の現場であるBH近傍 1-10000 Rs での質量降着流の空間構造は? についての研究が NGC 4261 についておこなわれ、学術論文が受理された。 この結果は、光学的に厚く幾何学的に薄い円盤が内縁が欠落した状態で存在し、光学的に薄く幾何学的に厚い高温降着流が同時に存在するという、理論モデルで提唱されてきたことが直接的に観測で初めて明らかにすることができたという、大きな成果である。 また、(A) についても新たに M84 について、低光度AGN電波放射の主エネルギー源がジェットであることをほぼ解明した。さらに (B) についても、M87 および 3C120 について、γ線放射領域についてこれまでにない定量的な結果を得ることができたとともに、Mrk 421, Mrk 501 での研究により新たな興味深い現象を提示することができた。 このように、3/5年目の段階としては当初の計画を上回る早さで研究が進んだと言える。
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今後の研究の推進方策 |
解明を目指して掲げた「活動銀河核 3 つの根源的問題」について、H24年度では (B) ブレーザーや電波銀河のγ線放射領域は BH から 何 Rs の地点に存在するか? について、H25年度では (A) Sgr A* や低光度AGNの主エネルギー発生源は、降着円盤か?ジェットか? について、H26年度では (C) 降着エネルギー開放の現場であるBH近傍 1-10000 Rs での質量降着流の空間構造は?について、着実な進展があった。 4年目となるH27年度では、上記 (A)(B)(C)の課題について更なる研究を深めるとともに、これらを統一的な描像に結びつけるよう意識した研究を目指す。 次年度の研究実施計画を以下のように設定する: (1) ジェット径の空間発展プロファイルからジェットの加速・収束メカニズムに迫る (NGC 4261, Cen A)。 (2) 時間領域と周波数領域の両面からγ線生成領域やブラックホール位置を決定する (3C120, 1H0323+342)。 (3) 低光度AGN についての ALMA 観測データを分析し、(A)の問題についてさらに切り込む。 上記について現在までの準備状況は:(1) NGC 4261, 3C120, 1H0323+342 については、論文執筆中である。 CenA については、データ解析が取得済であり、分析を開始する。 (2) データ解析を開始するところである。 これまで多くのデータを獲得することができており、次年度ではその分析と学術論文化を順調に進めてゆけると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた2つのVLBI観測が、天候不順により延期となり、その観測に関する成果発表に係わる経費の使用が次年度にまわる見込みとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
約3万円を研究打ち合わせのための旅費に、約23万円を出版費用に充てる予定である。
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