ミューオン原子内でレプトンフレーバーが破れている場合に起こりうるμe->ee反応の反応率を求めた。 レプトンフレーバーの破れは、ニュートリノ振動が確立したことから標準理論を超える理論に存在することはわかっていて、その候補ごとにどのような有効相互作用が可能か、どれくらいの大きさになるかが計算できる。有効相互作用の種類は複数あるので、それらを識別するため既存の実験手法以外の方法が必要であり、この反応はその候補となる反応である。 具体的には、原子ごとにミューオンおよび電子の波動関数をDirac方程式を解くことで求めて、その波動関数を使ってレプトンフレーバーの破れを起こす有効作用が四体フェルミ相互作用として得られる場合の反応率を計算した。その結果として、従来の近似計算と同様原子番号が大きいほど反応率が高くなることを見たが、その反応率の高くなり方は相対論的効果でより強くなることを見た。これにより、たとえばウラニウムをターゲットに使えば10^17個のミューオンを用意できれば、現在のμ->eee反応の制限と同等の制限を得られることがわかった。また、電子が二つ出てくるが、その方向とエネルギーの相関を見ると原理的には有効作用の種類も区別できることも示した。 一方で、IceCubeで観測した宇宙ニュートリノの欠損は、ミューオンフレーバーに特異なことが起こる可能性を示しているかもしれない事例である。それで、それに即した模型を考え、その場合の宇宙ニュートリノの伝搬を計算することで、どのような模型が可能化についての考察も行った。
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