研究課題/領域番号 |
24340050
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
竹内 康雄 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60272522)
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研究分担者 |
田阪 茂樹 岐阜大学, 総合情報メディアセンター, 教授 (60155059)
鈴木 州 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20243298)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ラドン / キセノン / ダークマター / 放射線 / 素粒子実験 / 吸着 / ナノ素材 / 活性炭 |
研究概要 |
本研究の目標は、キセノン及びアルゴン中のラドン濃度測定を0.01mBq/m3の感度で行う装置の開発と、その装置の暗黒物質探索実験への応用を検討する事である。今年度も引き続き、「1.高効率ラドントラップの開発」と、「2.低バックグラウンドラドン測定器の開発」の2つの要素技術の開発を進めた。 1.に関して、今年度は新たなナノ細孔素材の1つとして活性炭素繊維に着目し、活性炭素繊維を用いた吸着試験にとりかかった。あるメーカーから、数種類の細孔径の活性炭素繊維を入手し、吸着試験を行っている。 また、3種類のラドン吸着材料、ガラス管、ガラスウール、シラス多孔質ガラス(SPG)を、液体窒素で冷却して、純空気とアルゴンガス雰囲気中でラドン吸着率の測定実験を行った。その結果、SPGがアルゴンガス雰囲気中でも、十分なラドン吸着性能を示すことがわかった。多孔質ガラスは、活性炭に代わる新しいラドン吸着材料となる可能性があることを確認した。 2.に関しては、純空気中、純アルゴン中、純キセノン中での検出器の較正作業を進めた。80L検出器内部を満たすガスの種類により、ラドンの検出効率が変化する様子が確認された。基礎データはほぼ取得でき、中間的な報告を国際会議などで報告した。現在、最終的な結果を論文にまとめている。また、本年度の研究の過程で、較正試験に使用している80L検出器内部に放射線源が存在する事が判明した。これらはエタノールによるふき取り洗浄では除去しきれなかった。そのため、再度電解研磨処理することによるバックグラウンドレベルの低減を試みた。その結果、212Poのピークが、再処理前は25+/-1(cpd)であったところ、電解研磨再処理後には0.4+/-0.1(cpd)に低減された事を確認した。ウラン系列放射性核種の214Poに関しても低減がみられた。低減後の214Poのカウントレートは、0.5mBq/m3程度の222Rn濃度に相当する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は交付申請書に記載した実施計画の内容はおおむね予定通りの進展があった。 「高効率ラドントラップの開発」に関して、活性炭素繊維やシラス多孔質ガラスなどのナノ素材を用いたラドン吸着の試験を行った。ただしまだ理想的なキセノン中のラドン吸着材は選定できていない。効率の高いラドン吸着材は本研究の最も主要な開発要素であるため、今年度は本研究に重点をおいた。制御系の開発に関しては、各種センサー等を調達し、準備をすすめた。シーケンスプログラム部分は、トラップによる理想的な吸着パラメータを得た後に開発を進める予定である。 「低バックグラウンドラドン測定器の開発」に関しては、80Lラドン検出器の再電解研磨処理により、バックグラウンドの有意な低減を確認した。また容積1Lの小型のラドン検出器の製作を行う、ICFフランジにも電解研磨を試みる等、交付申請書の実施計画に記載した試みはほぼ行った。現在、今年度製作した小型の1L検出器に関しては、較正試験中である。 「希ガス中ラドン濃度測定システム全体を構築」に関しては、今年度中に着手する予定であったが、効率の高いラドン吸着材の選定を優先してすすめたため、まだ着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、引き続き「高効率ラドントラップの開発」を重点的に進める。特にキセノンとラドンは分子の半径が近いため、ラドンのみを選択的にトラップする技術の開発は難しい。当初の想定より開発に時間がかかっているが、効率の高いラドン吸着材は本研究の最も主要な開発要素であるため、十分な特性が得られるまで、本要素技術の開発は継続する。 来年度末の研究期間終了までに、測定システム全体を構築し、キセノン中ラドンの測定感度の実証試験を行いたい。また、暗黒物質探索実験への応用も検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初に計画していた状況と異なるため、ラドントラップの製作と希ガス純化装置の調達を順延しているため。 現在重点的に進めているラドントラップの高効率化は来年度中頃で一旦終了し、その時点で得られた最適なラドントラップを製作する。そのラドントラップを用いて希ガス中ラドン測定システム全体を構築し、システムの評価を行う予定である。予算に余裕があれば希ガス純化装置も調達する。
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