研究課題
本研究はビスマス系高温超伝導体(Bi2212)の光誘起超伝導相転移ダイナミクスから擬ギャップ(PG)準粒子と超伝導(SC)準粒子の関係性を明らかにすることを目的としている。提案した研究計画にもとづき、前年度は①偏光を組み合わせた光誘起相転移ダイナミクス観測から擬ギャップ転移温度以下で有為な異方性成分の存在、②超伝導相転移温度以上で発現するペアリングダイナミクスを見出した。擬ギャップ領域では、STM/STSを用いた電荷秩序やドメイン構造の存在が明らかにされており、①との関連性が示唆される。以上の知見をもとに、今年度は擬ギャップの起源を明らかにするため以下の2点について研究を進めた。(1)ペアリングダイナミクスと位相コヒーレンスの関係性(2)秩序形成ダイナミクスにおける相関スケール高強度光パルス励起を用いると、瞬時的な相蒸発に伴う秩序形成ダイナミクスが観測されるが、(1)ではペアリングダイナミクスを反映した超伝導準粒子の選択的な相蒸発が確認され、転移温度前後のクーパー対形成時間を正確に見積もることが可能となった。測定結果から振幅と位相コヒーレンスが独立した異なる時間スケールを有していることが示された。さらに(2)では瞬時的な相抑制を通してコヒーレントな擬ギャップ形成ダイナミクスの観測に成功し、系統的な測定結果からBi2212試料において臨界緩和が存在しないこと、すなわち擬ギャップは集団的電子秩序を起源とするのではなくモットギャップ的な局在状態であることが示された。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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