研究課題
前年度に引き続き,安定同位体154Sm2O3を用いてマルチフェロイック物質154SmMn2O5の単結晶育成を行った.SmMn2O5単結晶育成による育成条件の最適化により,154SmMn2O5の単結晶育成に成功した.完全磁気構造解析をおこなう為,韓国原子炉研究所の中性子4軸回折装置で中性子回折実験を行ったが,回折装置のトラブルと,原子炉内でのトラブルにより,中性子が止まってしまい,解析に耐えるデータの取得には至らなかった.今後,世界の別の原子炉施設を利用して再実験を行う予定である.SmMn2O5の磁気構造を解明する為に,共鳴X線磁気散乱実験を行った.Smの吸収端とMnの吸収端での共鳴磁気散乱シグナルの観測に成功した.その結果,磁気構造の周期は,結晶構造の周期に比べて2a x b x cとなった.更に詳細な実験の結果,SmおよびMnの磁気モーメントがc軸を向いている事を見いだした.一連のRMn2O5系ではモーメントの主成分はa軸であり,今回のSmMn2O5が他と比べて特異な磁気構造を持っている事が明らかになった.この結果から,b軸に分極を持つ強誘電性を許容する磁気構造モデルを提案した.現在論文執筆中である.前年度までに開発してきた多重反射回避アルゴリズムを用いたブラッグ反射強度測定法を軌道秩序物質YTiO3に適用した.測定されたブラッグ反射強度データを用いて超精密結晶構造解析を行った結果,3d電子1個の異方的な電子密度分布を得ることができた.この系は3d軌道が反強的に配列する軌道秩序物質であるが,その状態を「モデル無しに」実験的に可視化する事に成功した.この結果は構造解析分野で大きな反響を呼び,様々な国内/国際会議において招待講演を依頼された.今後この手法を様々な物質に適用していく事で,これまで得られなかった精度で結晶の微視的性質について「定量的に」議論できるようになると確信する.
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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EPJ Web of Conferences
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