半導体低次元電子系(0次元・1次元・2次元)における電子スピン-核スピン相互作用を利用して、半導体核スピンを電気的に偏極し、電気伝導測定により検出する実験を行った。2次元電子系においては、強磁場を印加することにより、量子ホール効果が観測される状況で、電流の印加により電子スピン反転を引き起こし、超微細相互作用を通じて核スピンを動的に偏極した。具体的には量子ホール効果ブレークダウンおよび量子ホール端状態-バルク状態間非平衡分布を利用した。1次元電子系においては、量子ポイントコンタクトにおいて近藤効果が観測される状況で電流を印加して、核スピンを動的に偏極した。0次元電子系においては、半導体InAs量子ドットにおいて、近藤効果を利用した動的核スピン偏極の導入を試みた。さらに、グラフェンにおいて同様な原理を活用し、13C核スピンの制御を試みる実験を行った。通常のグラフェンは核スピンを持たない12Cと核スピンを持つ13Cとの2種類の同位体から構成されるが、13Cのみから構成されている高温高圧合成グラファイトを原料として、13Cグラフェンを作製し、その電気伝導特性を評価した。さらに、強磁場を印加し、13Cグラフェンにおける量子ホール効果の観測、量子ホール効果ブレークダウンの観測を行った。量子ホール効果ブレークダウンを観測し、通常のグラフェン/hBNにおける量子ホール効果ブレークダウンと比較を行った。核スピン偏極の導入ではスピン分離量子ホール状態を利用することが必要であるため、13Cグラフェンにおいて強磁場を印加し、スピン分離および谷分離量子ホール効果の観測を行った。また強磁場中グラフェンではディラック点においてランダウ準位充填率ゼロの量子ホール状態が形成される。これに伴う急峻な抵抗ピークを利用して、核スピン偏極を検出することを試みた。
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