研究課題/領域番号 |
24340066
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加藤 雄一郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60451788)
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研究分担者 |
嶋田 行志 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20466775)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノチューブ・フラーレン / 光物性 / 物性実験 / 光伝導度 / フォトルミネッセンス / 電界効果トランジスター |
研究実績の概要 |
2014年度は、引き続き架橋カーボンナノチューブ電界効果トランジスター構造を利用した励起子の電界制御に取り組んだほか、局所ゲート付きデバイスにおける発光強度の回復現象の起源を明らかにした。新たに分割ゲート式デバイスの試作に取り組んで、高効率発光ダイオードの実現可能性を調査した。 まず、架橋型トランジスター構造におけるフォトルミネッセンス・光伝導度同時測定を利用して、単一のカーボンナノチューブにおけるフォトルミネッセンス励起スペクトルの電界依存性を解析し、電界の印加により発光波長の赤方偏移が起きることを明らかにした。ジュール熱が光励起強度に依存することと発光線幅が加熱によって広がることを利用して、温度上昇による赤方偏移ではなく、電解印加そのものに由来する発光エネルギー変化であることを示した。さらに、複数のカイラリティにおいて同様の測定を繰り返すことにより、赤方偏移が理論的に予測されたシュタルク効果とよく一致することを示した。この際、架橋ナノチューブにおける大きい励起子束縛エネルギーを考慮する必要が有ることが分かった。 また、局所ゲート付き架橋ナノチューブデバイスでは、昨年度観測していた交流電圧の周波数の増加に伴う発光強度の回復現象についてさらなる調査を進めた。この現象は交流電圧において電圧の符号が変わるときのみに起き、また、飽和周波数が励起光強度に比例して増加することを明らかにした。この現象を説明するために、光励起されたキャリアが非発光緩和を引き起こし、電圧反転がキャリアを電極に押し出すことにより一時的に発光が生じる、というモデルを提案し、これを時間分解測定により検証することに成功した。 一方、架橋ナノチューブ分割ゲート式デバイスは作製方法を概ね確立し、一部発光ダイオードとして動作するデバイスが確認できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、単一の架橋カーボンナノチューブを組み込んだデバイスにおいてフォトルミネッセンスや電界発光、光伝導度測定を行うことにより、励起子の電界下での挙動を明らかにし、励起子の電界制御手法を実証することを目的としている。今年度までに、フォトルミネッセンスと光伝導度の同時測定を実現し、励起子の自発的解離やシュタルク効果の観測に成功しているほか、交流ゲート電圧による光パルス列生成にも成功している。一方、架橋ナノチューブ分割ゲート式デバイスによる発光ダイオードは歩留まりに課題が残っているが、総合的には概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き架橋カーボンナノチューブ電界効果トランジスター構造を利用したフォトルミネッセンス・光伝導度測定を進めて励起子物性の電界制御に取り組むほか、架橋ナノチューブ分割ゲート式デバイスの歩留まり向上に取り組み、発光ダイオードとしての動作実現を目指すほか、新原理による発光デバイスの可能性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
架橋ナノチューブ分割ゲート式デバイスの作製が想定より困難であり、デバイス作製に使用する消耗品費およびクリーンルーム使用料が予定より少なかったため。また、論文出版料の請求が次年度にずれ込んだものがあるため。
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次年度使用額の使用計画 |
デバイス試作のための消耗品・クリーンルーム使用料、成果発表のための旅費、また、論文出版料等に充当する計画である。
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