2本の微小Josephson接合列中のトンネル電流の非局所相関について、昨年度までの電圧バイアス下での電流の相関という観点に加えて、より包括的な特性評価を行い、一方の接合列(2次接合列)のCoulomb閉塞電圧は、他方の接合列(1次接合列)の電流値の1/2乗に依存して小さくなることを見出し、1次接合列の電流は、その大きさの1/2乗に比例する交流電圧を2次接合列に誘引するというモデルを提唱した。その誘引係数は、10um程度の距離では、距離に反比例して減少することも見出した。この結果の一部は台湾国立中興大学グループとの共同研究として行った。 次に、電流の非局所相関の特徴を調べる際に導入したAl/AlOx/V接合からなる素子に関連して、この接合が、低バイアス時に、Cooper対と準粒子のトンネルが併存する接合であることとこの接合を単一電荷素子に用いた場合の特殊性を超伝導単一電子トランジスタの特性の定量的な評価を通して明らかにした。 SQUID列リードのついた微小Josephson接合列の電流電圧特性について、そのBloch振動の特徴を電荷ソリトン・モデルに基づいて明らかにした。また、付随的に現れる定電流構造については、この系と同じ特徴をもつ最小系として、大きさの異なる2重接合の中央電極にSQUID列リードが付加された素子について、この現象を調べた。これは、従来Josephson準粒子サイクルとして知られているトンネル過程でそれぞれの接合のトンネル伝導を分離して観測することに相当し、これまで認識されていないトンネル過程間の相互作用を見出した。一方の接合でCooper対の共鳴トンネルが起こり、引き続いて他方の接合で準粒子トンネルが発生する際に、Cooper対から帯電エネルギー程度のエネルギーが放出され、他方の接合の準粒子トンネルの閾電圧が低下する。このような内部相互作用は、複数の微小接合からなる素子で普遍的に起こる現象であろうと推察された。
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