研究課題
Rashbaスピン分裂が電子輸送にもたらす効果を検討することを目的として、Ge(111)表面上のPb単原子層について、室温から9 Kまでの温度範囲での精密電気伝導度測定を行った。このPb層は2次元自由電子的電子状態を有し、この電子状態バンドは巨大Rashba効果による大きくスピン分裂している。伝導測定は本研究において新たに開発した高精度表面電気伝導度測定装置を用いて行った。Pb単原子層は室温から9 Kまでの温度範囲で金属的状態を保つことを見出した。この系の2次元フェルミ面は正六角形状をしており、一般にはフェルミ面ネスティングによる不安定性を生じ易いが、この系のフェルミ面はスピン分裂しているために、フェルミ面不安定性から保護されていると考えられる。9 Kにおける直流電気伝導度は10.2 mS/sqであった。これは類似の2次元金属系に比べて1桁から2桁大きな値である。単原子層の電気伝導度は表面ステップの伝導度に支配されていると考えられるので、微傾斜表面基板を用いて、ステップ伝導度を決定した。Pb/Ge(111)のステップ伝導度は類似の2次元金属に比べて2桁程度大きく、きわめて異常であることが明らかとなった。一方、電気伝導率の温度依存性から求めた電子フォノン結合定数は0.16であり、バルクPbの値1.1~1.5に比べて極めて小さい。角度分解光電子分光により求めた値も同様に小さかった。Ge(111)表面上のPb単原子層は、テラスにおいてもステップにおいてもきわめて高い電気伝導度を有し、また、電子フォノン散乱も抑制された非常に良い2次元金属性を有することを明らかにした。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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