| 研究概要 |
本研究では,Ce化合物が該当するクラマース状態を持つ通常の近藤格子モデルと,PrやU化合物が該当する非クラマース単重項-3重項近藤格子の秩序状態を理論的に研究した。連続時間モンテカルロ法(CT-QMC)と動的平均場理論(DMFT)を活用して,(1)近藤格子の反強磁性秩序内での電子状態、および(2)2チャンネル近藤格子における複合体秩序の形成を明らかにした。
(1)近藤格子の反強磁性と遍歴・転移
近藤効果は各サイトに単重項を形成する作用があるが、近藤格子では磁気秩序が形成される可能性もある。両者の相対的安定性を支配するパラメータは近藤相互作用Jとバンド幅Dの比であるが、我々はさらに直接サイト間相互作用J_Hを導入して相図を求めた。伝導電子数がサイトあたり1個の場合、Jが小さいと基底状態は反強磁性絶縁体になり、大きいと近藤半導体になる。この中間の領域では、近藤効果の強く効いた反強磁性秩序が形成され、帯磁率は独特の温度依存性を示す。この系にわずかにドーピングすると、反強磁性基底状態でフェルミ面の異なる2つの状態が競合する。これは重い電子の遍歴・局在転移に同定された。
(2)非クラマース結晶場状態を持つ2チャンネル近藤格子の複合秩序変数
非クラマース2重項を結晶場基底状態にもつ近藤格子で新しいタイプの秩序状態を見出した.伝導帯が非クラマース2重項に対応して軌道縮退しており,サイトあたり1個の伝導電子があるモデルをとる.この場合,時間反転対称性は破れているが,磁気モーメントのない秩序が発生することを見出した.この秩序は,遍歴人極子の秩序変数に対応する.
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| 今後の研究の推進方策 |
非クラマース近藤格子の秩序と,URu2Si2などで観測されている隠れた秩序の関連を明らかにする。また,磁場に鈍感な重い電子のモデルを立て,数値計算と解析的計算によって,現実的な妥当性を議論する。
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