成果の第一は,伝導電子と局在f電子の両方を含む複合体秩序の存在を理論面から確立したことである。複合体秩序は典型的には遍歴多極子あるいは奇数波超伝導として出現し,「隠れた秩序」の理解に向けての有力な情報を与える。第二に,近藤格子の反強磁性量子臨界点では,重い電子の遍歴性が保たれることを立証した。遍歴・局在転移が,反強磁性相の内部で生じることは,ある種のCe化合物の精密な実験結果をよく説明する。第三に,価数揺動の特性エネルギーが,伝導電子とのクーロン相互作用により減少する条件を明らかにした。この機構は,伝導帯が多数ある場合に,磁場に鈍感な重い電子の形成を可能にする。
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