研究課題
水素結合中のプロトンは、機能性有機固体中でも電子に次いで軽い粒子であり、固体形成に関わる他、その動特性は、強誘電性やプロトン伝導など、固体物性の中で重要な役割を果たす。しかしながら、これらのプロトン由来の「プロトン固体物性」は、電子が主役で電気伝導性や磁性を与える「電子固体物性」とは、従来、別個独立に研究されてきた。 近年、提案者らはこの「電子固体物性」に「プロトン固体物性」が連動した「電子―プロトン相関系機能性有機物質」κ-H3(Cat-EDT-TTF)2およびその類縁体の開発に成功した。本研究では、この有機伝導体における顕著な相関物性を探索することを目的としている。その結果、本課題でこれまでのところ、以下が見出された。(1)κ-H3(Cat-EDT-ST)2において、プロトンの脱離とホールの導入で、単成分純有機物であるにもかかわらず伝導体となり、わずかな圧力で金属状態を示すことが明らかにした。(2) κ-H3(Cat-EDT-TTF)2において、歪んだ三角格子を持つにもかかわらず、低温まで磁気秩序をしない量子スピン液体であることを見出した。そして、この現象が、伝導層間の水素結合プロトンの量子的な揺らぎ(量子常誘電状態)にカップルしていることを、実験及び理論から見出した。(3) 伝導層間の水素結合プロトンをデユーテロンに変えると、185Kで、水素結合デユーテロンの無秩序ー秩序化に伴い、伝導性及び磁性のスイッチングが発現することを見出した。本年度はさらに、プロトンの欠損とホールの導入により自己ドープされた、theta型のプロトンー電子相関型有機伝導体を見出した。特徴的なこととして、3次元水素結合ネットワークを有すること、また全ての分子は+0.25価であり、7/8充填バンドを有し、プロトンの脱離量でホールキャリアの程度(バンドフィリング)を制御していることを明らかにした。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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