研究概要 |
絶縁体の表面に特殊な金属状態(グラフェンと同様な質量ゼロのディラック電子でスピンも偏極)が出現するトポロジカル絶縁体について、新物質の物質開発に取り組んだ。mとnを整数としたBi_<2-m>Sb_mTe_<3-n>se_nで表せる化合物について、{m=1;n=3}と{m=2;n=3}以外の10種類を良質で大型な単結晶試料として合成することに成功し、それらの輸送特性を詳細に評価した。実験によってバルクにキャリアが少なくて絶縁性の高い化合物であることを確認し、加えて第一原理計算による電子波動関数の集合が持つ位相幾何学的特徴の解析による判定結果から、Bi_2Te_2Se{0;1}とBiSbTeSe_2{1;2}が非常に高性能なトポロジカル絶縁体の候補物質であることを提案した。また、Bi-Te-Bi-Te-Biのユニット内に(GeTe)_n層を挿入することで派生する定比組成(GeTe)_nBi_2Te_3で表せるホモロガス相化合物について、n=0(Bi_2Te_3),1/2(GeBi_4Te_7),1(GeBi_2Te_4),2(Ge_2Bi_2Te_5),3(Ge_3Bi_2Te_6),∞(GeTe)の良質で大型な単結晶試料の育成にも成功した。第一原理計算による詳細な電子構造の解析から、n=1/2,2がこれまでに報告のない新しいトポロジカル絶縁体であることを明らかにした。ホモロガス性を利用したトポロジカル絶縁体物質の開拓においては、主成分で元素戦略の対象となっている重元素のBiの割合を大幅に減らしてもトポロジカル絶縁体が実現できることを示した点において注目を集め、新聞報道(日経産業新聞・11面、2012年9月7日)もなされた。また、トポロジカル絶縁体に着目した物質探索の過程で、重元素を含み空間反転対称性をもたない結晶構造をもつ興味深い超伝導体を見出し、その単結晶化と物性評価にも研究が派生し進展した。
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