研究概要 |
シリコンの限界を超える次世代デバイス材料として質量ゼロのディラック電子状態をもつグラフェンが注目されている。そのグラフェンを超越し凌駕できる可能性をもつ新電子材料である「トポロジカル絶縁体」について、新物質開拓とその良質大型単結晶化、そして単結晶を用いた電子状態の実験検証を継続して行っている。 新物質探索では、Bi2Te3 がもつホモロガス性に着目して、Bi-Te-Bi-Te-Bi の基本ユニットの層内への(GeTe)n 層の挿入、層間への (Bi2)m 層の挿入という2つのアプローチで、系統的な物質合成と評価を行った。良質な単結晶育成に成功した n,m = 0 (Bi2Te3), n = 1/2 (GeBi4Te7), 1 (GeBi2Te4), 2 (Ge2Bi2Te5), 3 (Ge3Bi2Te6), ∞ (GeTe) および m = 1/2 (BiTe), 1 (Bi4Te3), 2 (Bi2Te) について輸送特性の評価を詳細に行うとともに、第一原理計算で電子波動関数の集合が持つパリティ解析を行うことで、トポロジカル絶縁体であるか否かの判定を行った。 一方で、重元素のみで構成され、層状構造をもち、更に空間反転対称性をもたない物質を中心に物質探索を行うことで、「極性トポロジカル絶縁体」の開発に初めて成功した。従来のトポロジカル絶縁体に比べて、この物質を用いるとデバイス構造を単純化できるため、応用面でも注目を集めることとなり、新聞報道(日経産業新聞・21面、2013年10月16日)もなされた。 電子状態の実験検証においては、STM/STSを用いた原子レベルでの表面観察と電子状態マッピングにより、グラフェンとは異なってトポロジカル絶縁体のディラック電子状態は乱れに強いこと、更に、外部電圧によってナノスケールでトポロジカル表面状態を制御・記録できるなどの新機能を発見した。
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