研究概要 |
鉄系超伝導体では鉄の3d電子の「軌道自由度」に起因する軌道整列や軌道揺らぎといった興味深い物理現象が発現し、これらは超伝導発現機構と密接に関連すると考えられる。我々は、平均場近似を超えた様々な理論解析手法を開発し、多体電子状態や超伝導発現機構における軌道自由度の重要性を明らかにしてきた[1,2]。さらにTcに対する不純物効果[3]やTc以下の中性子散乱実験[4]などの理論研究を行った。 近年、鉄砒素系超伝導体やルテニウム酸化物など様々な強相関電子系において、電子系の面内4回対称性が自発的に低下する「電子ネマティック秩序」が発見され、新規な相転移現象として注目を集めている。この現象は量子効果が重要であり、平均場近似では説明できない。そこで我々は、自己無動着バーテックス補正法[5]や2次元繰り込み群法[6]などの新しい理論手法を開発し、その正体が軌道整列現象であるという結論を得た。 さらに最近、東工大の細野たちがHドープ系LaFeAsOの相図を完成させ、高Hドープ領域で4回回転対称性を保ったメタ構造転移(C4構造転移)および磁気秩序相を発見した。我々は第一原理計算の手法に基づき5軌道ハバード模型を構築し、自己無撞着バーテックス補正法により解析を行い、相図全体の理解に成功した。その成果を論文[7]にまとめた。 [1] S. Onari and H. Kontani, Phys. Rev. Lett. 109, 137001 (2012), [2] H. Kontani and S. Onari, Phys. Rev. Lett. 104, 157001 (2010), [3] S. Onari and H. Kontani, Phys. Rev. Lett. 103, 177001 (2009), [4] S. Onari, H. Kontani, and M Sato, Phys. Rev. B 81, 060504(R) (2010), [5] Y. Ohno, M. Tsuchiizu, S. Onari and H. Kontani, JPSJ 82, 013707 (2013), [6] M. Tsuchiizu, S. Onari and H. Kontani, Phys. Rev. Lett. 111, 157003 (2009), [7] S. Onari, Y. Yamakawa and H. Kontani, Phys. Rev. Lett. 112, 187001 (2014)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
昨年度の最大の目標であった、Hドープ系LaFeAsOの相図の理論的説明に成功し、日本物理学会やアメリカ物理学会をはじめ、様々な国際会議の招待講演において、その成果を発表することができた。さらに研究成果を論文にまとめ、最近 S. Onari, Y. Yamakawa and H. Kontani, Phys. Rev. Lett. 112, 187001 (2014)に出版することが出来た。
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